【レビュー】目新しさゼロで勝負する新作音ゲー【Liminality】

【実・績・解・除】案件を受ける

 

なんと新作音ゲーの先行体験会に招待されました。おれでいいの?

そんなわけでブログに感想を書くことにした。

 

これはレビュワーあるあるとして、案件でもらった製品に悪いところが言えない軟弱なレビュワーがいる。ところがおれは普段から譜面の悪口を言いまくっているので、レビューで悪口を制限されるとなーんにも書けなくなってしまう。

 

ということで言質を取りに行った。

 

ちなみに、おれはダークモード派である。

 

よし。

 

これで何を書いてもいい。そもそもおれは Liminality 側に報酬をもらっていないんだから、書くことを制限されるというのがおかしな話ではある。

 

こんな脅しをするくらいなので、おそらくこれでおれが新音ゲーの先行体験会に招待されることは二度となくなるだろう。合掌。

 

 

 

基本情報

アプリ名:Liminality

リリース日:2023年4月29日

公式 Twitterhttps://twitter.com/liminality_dev

 

https://twitter.com/liminality_dev/status/1648974799333359617?s=20

 

プレイヤーのことを「エージェント」と呼ぶらしい。まあプレイヤーのことを「レンダラー」というわけのわからない呼称で呼ぶゲーム*1もあるし、別にいいか。

 

事前情報

収録曲

なんとこのゲーム、稼働前から楽曲公募コンテストを行っている。本気。

この公募で採用された楽曲が、製品版では追加される予定。

 

 

これが最優秀楽曲。おれはめちゃめちゃすき。

https://twitter.com/liminality_dev/status/1651164216110247936?s=20

https://twitter.com/liminality_dev/status/1651164216110247936?s=20

 

 

https://twitter.com/liminality_dev/status/1651511512023044097?s=20

運命論も入るらしい。ワロタ

 

ノーツの種類

公式 Twitter でノーツの種類が告知されている。

 

 

タップ:いつもの。ノーツが判定エァリアに重なるタァーイミングで手元のパァーノゥを叩くッ!!

スライド:いわゆるロング。おれが蛇蝎のごとく嫌っている終点判定は実装されてなくて安心した。

左右フリック:いわゆるフリック。ベータ版では左フリックと右フリックがあったらしいが、製品版では統合された。おれが経験した左右のフリックが分かれているゲームは(もうサ終した)WACCAと(もうサ終した)ミュゼカ*2なので、フリックの方向指定を消した判断は賢明だと思う。

上フリックそれは分けるんだ。

チェインノーツ:Deemo でもなじみ深い押しっぱノーツ。難易度を上げずに16分や24分の音をとるときに便利。

Liminality ノーツ:なんかかっこよさそうなノーツ。見た目としては悠久のリフレシアのビッグバンオブジェクトに近いかも*3。maimai の BREAK のような使われ方をするんだと思う。

 

通してやってみた

タイトル画面

音ゲーあるある:デザインサイバーチックがち

 

かっこいい。

下の「MENU」からはクレジット表記などが見られる。

 

ロビー画面

銀髪オッドアイ美少女にお出迎えされている

 

キャラクター部分にはランダムにキャラクターが出てくる。この画面では「宮藤瞳」と名乗るオッドアイのかわいいおんなのこが写っているが、「ハルアキ」とかいう謎のロボットが写っていることもある*4。おれは謎のロボットには興味がないので、運営にはここのキャラクターを美少女に固定できる機能を強く要求する。

ロビー画面から選択できるのは「MUSIC PLAY」のみ。将来ここに何かが追加される可能性は高い。

 

選曲画面

いつもの。

よくある選曲画面。曲名部分をスワイプで移動、難易度部分をタッチで難易度変更。UIはシンプルかつ直感的で素晴らしい。

楽曲を選択すると、コンポーザーや BPM といった基本情報が見られる。ジャンル名も書いてある所にはこだわりを感じる。自身のハイスコアもここで閲覧可能。

 

左下にはソートボタンもある。

 

ソート種別はいっぱいある

 

曲名ソートやスコアソートといったおなじみのものはもちろん、作曲者ソートや BPM ソートといったニッチなものもある。ここはかなり充実してる。

 

設定画面

リズムゲームに関するオプション

ハイスピード・タイミングが調整可能。ここは一般的な音楽ゲームにもある機能。

FAST/SLOW の表示を切り替えることもできる。通常の100万点スコアのほかに、より高い精度力を要求される EX SCORE というものがある。それに合わせて、 FAST/SLOW も二段階で表示/非表示を切り替えられる。

 

音量に関するオプション

音量はBGMとSEの音量を変更可能。

 

画面表示に関するオプション

リリース当初から 120fps 出力に対応している音ゲー

画面方向設定では画面方向を固定することができる。端末の向きによってプレイ中に回転しなくなって済む。

 

プレイ画面

「PLAY」を押すとプレイ画面へ。プレビューではジャケットのイラストレーターと譜面制作者が確認できる。

 

アーティスト・イラストレーター・ノーツアーティストが全員わかる

 

 

プレイ動画を撮影するのがかなわなかったので、こちらの動画を参考にしてほしい。

 

www.youtube.com

放射線状のレーンで、中央から流れてくるノーツをさばく形式。アーケードゲームなら maimai や WACCAスマホゲーなら Lanota や Rotaeno が近い。ところが画面上部にはレーンが存在しない。そのため下から上にノーツが降ってくる、ということは起こらない。

動画を見ればわかる通り、二本指でプレイ可能。これはこの譜面だけでなく、先行体験できる譜面についてはすべてそうだった。家庭用音ゲーでも当たり前のように3つ以上の同時押しや「階段」を置くゲームが多い中、後発音ゲーで二本指で遊ぶ想定の譜面が降ってくるのは珍しい。

 

リザルト画面

f:id:cardinalfang-quizmasta:20230428182207p:image

スコア、グレードなどなど、必要十分な情報が載っている。「New Record」表示も地味にうれしい。「詳細表示」を押すことで判定詳細をみることができる。

 

特筆すべきは EX SCORE。これは最高判定「HI-TECH」をさらにふたつに分けて、より厳しく判定して算出されるものである。おそらく

  • HI-TECH+:2点
  • HI-TECH:1点
  • GOOD:0.5点

となっている。手なりでやっているとそれなりに無印 HI-TECH が出るので、EX SCORE を上げるならかなり集中力がいる。 maimai のでらっくスコアのような超々上級者向けのエンドコンテンツになりそう。

 

ポーズ画面

f:id:cardinalfang-quizmasta:20230428182220p:image

ポーズ画面から直接設定画面に飛ぶこともできる。ハイスピードや判定の調整が楽。

「続ける」が真ん中にあるのも嬉しい。これで誤操作で「最初から」に戻らなくて済む。

 

 

細かな改善点

本題に入る前に、いくつか細かな改善点というか文句を並べておく。ちなみにこれらについてはすでに運営にも共有している。

  • オプションにタイミング調整の項目があるが、どっちにずらせば判定が早くなってどっちにずらせば判定が遅くなるのか不明。
  • FAST が赤で SLOW が青なのは逆だろ。beatmaniaDDR もゲキチュウマイも Arcaea もみんな「FAST が青で SLOW が赤」。このことについて文句を言われ続けていた SOUND VOLTEX は最近ここの色変更をできるオプションを追加した。
  • BAD 判定でもふつうにコンボがつながるので違和感がすごい。これのせいでフルコンボの達成感がまあまあ薄い。そもそも「悪い!」って言われてるのにフルコンボといって褒められると、お情けで単位をもらう大学生みたいでちょっと申し訳なくなる*5
  • ミラーオプションをつけられるようにしてほしい。
  • レーンの暗さも調整できるようにしてほしい。
  • 奥にある穴の部分をふわふわさせないでほしい*6気が散るので。

 

「目新しさ」のない音ゲー

ここからが本題なのだが、この Liminality というゲームは「目を引く新要素」が一切ない。

 

よく考えてみたら、家庭用音ゲーには「新要素」がつきものである。

いまはすっかりメジャーになった Arcaea も、「アークノーツ」という画面をなぞるノーツが登場した。最近登場した Rotaeno というゲームはジャイロ機能を譜面のなかに取り入れ、ノーツとして落とし込んだ。

ノーツで新要素を出せないなら、レーンを変形させればいい。Dynamix は 三方向からノーツが降ってくるし、Phigros は判定ラインが動く。 Lanota は円形のレーンを丸ごと動かしてしまう演出を用意した。

あるいは、アーケード音ゲーのようにたくさんのノーツを降らせて、たくさんの指でプレイするゲームを目指してもいい。 OverRapid や KALPA といったゲームがこれにあたる。

目の引き方は譜面によらない。Cytus/Deemo のように、音ゲーにストーリーを付属させることで、さらにゲームの魅力を上乗せすることもできる。Deemo2 ではマップを駆け回り、探索するという要素まで加わった。プロジェクトセカイに至っては、もはやストーリーを読んで、キャラクターを推す・愛でるゲームとして楽しむ人のほうが大勢だろう。

 

ところが Liminality には何もない。せいぜいレーンが広くなったり狭くなったり、形が変わるくらい。個性ひしめく家庭用音ゲーにおいてこの程度は「個性」とは呼べない。

 

 

目指すのはシンプルな音楽ゲーム

 

新要素もない、レーンも動かない、じゃあ Liminality に価値はないのか?

全くそんなことはない。このゲームはシンプルであるからこそ面白い。

 

Liminality では、放射状に譜面が降ってくるという「よくある」形に、タップ、スライド、フリックという「よくある」ノーツが降ってくる。ほとんどの音ゲーはタップとホールドで構成されており、さらにほとんどのタッチ式音ゲーにはスライドやフリックがついているから、これらは必要最低限のノーツ、と言ってしまっていいだろう。そういったエッセンシャルな部分だけを残し、それ以外の要素を一切排している。

よくある要素しかない音楽ゲームには、すぐに慣れる、という長所がある。慣れるステップ、というのは必ずしも楽しい事ばかりではない。それでプレイをやめてしまうこともあるかもしれない*7新要素というのは、裏を返せば人を選ぶ要素ということである。

 

しかもこのゲームには「音楽ゲーム」以外の要素が一切ない*8。楽曲とそれを彩るジャケット、そして普遍的な要素に絞った譜面だけ。まさに「引き算の音楽ゲーム」といえる。

 

奇抜さはゼロ。味で勝負

音ゲーの骨となる部分しかない分、そのクオリティは高い。

 

120fps に対応していることからもわかるように、運営の音ゲーに対する理解度はめちゃめちゃ高い。ハイスピ変更や FAST/SLOW 表示は当然のように実装済、さらに EX SCORE という上位のスコアもあり、歴戦のゴリラをも飽きさせないシステムになっている。

譜面の完成度もかなり高い。少ない要素で、かつ二本指でできるように、という縛りがあると表現力はかなり落ちるといっていい。しかし、ノーツの大きさや配置を巧みに調整することで、見てもにぎやかでプレイしていても楽しい、という出来に仕上がっている。リリース当初からこのクオリティの譜面が遊べるのは、昨今の音楽ゲームだとかなり貴重なことである。

 

 

 

というわけで総括。

Liminality はとくに目新しさのないふつうの音楽ゲーム。ただ、「手抜き」ではなく「洗練」という言葉が似あうクオリティに仕上がっている。アーケード・家庭用問わず多種多様の音楽ゲームが個性を尖らせる中だからこそ、「ふつう」の音楽ゲームの、ふつうであるからこその良さを味わえると思う。

正式リリースが明日であるが、おれもしばらくはちゃんと遊んでいきたい。飾りのないシンプルな音楽ゲームが、ひとつくらいは残っていてほしいものである。というか、現状課金コンテンツがなさそうなので、釣りじみたタイトルのレビュー記事を書く以外には遊び続けることでしか応援ができない。

 

あとは何かの間違いでこのレビュー記事が関係者の目に触れて星街すいせいの曲が入ることを祈っているので、関係者のみなさまはよろしくお願いします*9

 

 

 

 

 

 

おまけ1:譜面寸評

 

先行体験版に収録された6曲について、その感想を書く場所(すべて Wizard 譜面)。レビューするにあたって全部 SSS+ GRADE + FULL COMBO を達成した。ここまでやらなくてもレビューって書いていいらしい。

 

massive

massive (Wiz13): 992481

4分、8分の同時押しや混フレが主体の譜面。基本的にはバンバン画面を叩いていれば勝手にコンボがつながるのでおもしろい。ただタップ+フリックの配置は丁寧にとらないと GOOD を貰ってしまうのであんまり好きじゃない。

 

Pure blue→

Pure blue→ (Wiz14): 993598

Melodic Dubstep という聞いたことのないジャンル名。たしかに 2STEP のゆっくりとしたノリの中に、最近の音楽ゲームではやりのエモいシンセがついている。

譜面は非常にメリハリがついている。Dubstep 地帯の密度は薄く、Melodic 地帯では複雑なフレーズをタップで叩かせる。しかし Dubstep 地帯のスライドは非常に大きく動くため見栄えがキレイで、飽きさせない工夫がある。

 

Obscuritas

Obscuritas (Wiz14): 992675

イチオシ譜面。先行体験版を遊んでいる人の中でも、これをアップしている人がかなり多かった印象。
Dubstep のノリにあわせて、ホールドとスライドで強拍を刻む感覚が最高。音のゆがみにあわせて形が歪むスライド、曲中のサンプリングにあわせ腕を振り上げるフリックは、楽曲への没入感を高めてくれる。既存の音ゲーで「気持ちがいい」とされている要素を積極的に取り込んでいて、遊びごたえ抜群の仕上がりになっている。

 

 

Preserved in Pandora

Preserved in Pandora (Wiz15): 991138

イチオシ楽曲。いくつになっても Artcore は大好きなんですわ。

譜面はおおむね素直。道中にあるスライド+フリックでの連続切り返し、サビ前の12分チェイン+強拍タップは好み。曲の終盤では、難易度を上げるためにバックのパーカッションを取っている。楽曲の盛り上がる部分に難しい譜面を置く、というのも、既存の音楽ゲームが積み上げてきた知見。

 

Demone † Eveil (Liminarity Edit)

Demone † Eveil (Liminarity Edit) (Wiz16): 993939

高い BPM に高密度で重たいキック、やたら壮大な雰囲気と、現代の音楽ゲームを象徴する楽曲。譜面もまた交互タップを中心に、高速高密度で攻めるという現代音ゲーのボスを象徴するような譜面。ただリズムはかなり単純なので、音ゲーに慣れている人ならかえって高スコアを取りやすいかもしれない。Liminality の「シンプルなおもしろさ」を噛み締められる良譜面。

余談だが難所となる交互配置が全部左始動になっている。おれが Liminality にミラーを実装してほしい理由の9割はこいつの難所を右手からしばきたいから。

 

Sky World

Sky World (Wiz16): 992297

 

本当に難しいので、みんな製品版でプレイしてほしい。

 

 

 

 

おまけ2:レビュー動画 / レビュー記事紹介

 

京都大学音楽ゲームサークル「京音」のほうでも記事が上がっている。

 

keionkakimasen.hatenadiary.com

 

さすがおれのイチオシであるところの京音メンバーの日記である。

 

3qua9la-notebook.hatenablog.com

 

動画形式でのレビューもある。譜面のようすやプレイ時の雰囲気がめちゃめちゃわかりやすいのでぜひ見てほしい。

 

www.youtube.com

HQQ さんの動画。ノーツの説明がとても丁寧なので、プレイの感覚をつかむのにピッタリ。このゲームのフリックは手を離さなくていいのでサムネの配置は超楽しい。

Sky World [Wizard] で L GRADE*10 を取っていてマジでうまい。よく見たら過去にグルミクのファルサム P しててそれはそうか~になった。

 

www.youtube.com

ふみさんの動画。ノーツに関する事前知識がゼロでも初見で L GRADE を取れるところに、ゲームデザインの洗練された完成度を感じる。

この人も終点判定に言及しててワロタ。やっぱ気になるよね。

*1:OverRapid のこと。ちなみにレンダラーにも「仮死状態に陥った人類の記憶を復旧する」というミッションが課せられているらしく、そういう意味ではエージェントといって差し支えない。

*2:正確にはフリックではなくスピンだが、操作感覚はだいたい同じ。

*3:伝わるんか?これ。

*4:しかもGB処理が雑なのかエッジがバキバキ。

*5:おれの学部時代のドイツ語とかね。

*6:ちなみに、上で紹介した動画のPreserved in Pandora [Wizard] は穴がふわふわしない。譜面によって違うらしい。

*7:たとえばおれは「下から上にノーツが降ってくる」仕様に慣れずに Phigros を投げた。下から来るノーツを取ろうとすると腕で次のノーツが隠れる不快に耐えられなかった。

*8:これから追加されるのかもしれない。

*9:この文本当に必要?

*10:通常スコアで満点を取ったときのグレード。