ここ最近はキーボードにハマってしまって、関連の記事がだいぶ多くなりました。
「書く」ことに興味があります。ちょっと前までは、音ゲーの記事とともに作文技術の記事がかなりの量を占めていました。それで、現代において「書く」道具といえばキーボードですから、キーボードにも興味が向いてしまった、というところ。
さて3月も残り少なくなり、これから新生活に入る方々も多いということで、総決算とばかりに改めてキーボードについてまとめた記事です。この記事の前半では「価格の違うキーボードはどこが異なるのか?」を紹介し、後半には予算別のおすすめキーボードを載せています。みなさまの参考になればと思います。
価格の違いはスイッチの違い
そもそも、キーボードの値段は何で決まるのでしょうか。いわゆる「高級キーボード」って、そこらへんのものと何が違うんだ?
それは「キースイッチの機構」です。つまり、スイッチが押されたことをどのように判定するか、が違います。
キーボードに採用されているキースイッチの構造は、こちらの動画にかなりよくまとまっています。
こちらの動画も参考にしつつ、文章の形でもまとめておきます。
メンブレン式
だいたいよく見るキーボードはこの方式。ゴム膜を押し込むことで電極を反応させます。
一枚のゴム膜ですべてのキースイッチを成形できるので、安価で製造できるのが特徴です。いっぽうで、押し心地もゴムをつぶすようなグニグニとした感触になります。単に押し心地が悪いだけでなく、強い力でゴムをつぶすので疲れる、深く押し込まないといけないので反応速度が遅い、というデメリットがあります。
類似の方式として、パンタグラフの機構を追加したパンタグラフ式というものもあります。ゴムをつぶしてキーを反応させる仕組みは、メンブレンと同じ。ノートPCのキーボードには、薄くて安定感のあるパンタグラフ式が用いられています。
メカニカル式
キーひとつひとつにスイッチを搭載した方式。
メカニカルスイッチはゴムよりも耐久性が高く、より長持ちという特徴があります。またプラスチックでできたスイッチは底打ちが硬く、よりシャキシャキとした打鍵感が味わえます。しかし、ひとつひとつにスイッチを用意しなければならないため、値段は高くなります。
メカニカルスイッチにはさらに、キーを押したときの感覚によって大きく3種類に分けられます。
- 抵抗なくスイッチが下りるリニア
- わずかに抵抗が生じるタクタイル
- 強い抵抗とクリック音が感じられるクリッキー
俗に「赤軸」「茶軸」「青軸」と称されるものです。ここらへんの違いについては、こちらの記事が参考になります。
類似の方式に、光によってスイッチが押されたかどうかを検出する「光学式」もあります。
静電容量式
キーを押しつぶすことで生まれる静電容量を検出することで、キースイッチが押されたかどうかを検出する方式。電極のような物理的接点が存在しないため、静電容量無接点方式ともよばれます。
ラバーカップによる適度な抵抗ある打鍵感としっかりとした底打ちを兼ね備え、特徴的な打鍵感を有しています。また、接点が存在しないスイッチは劣化が遅く、より高い耐久性を誇ります。そのぶん値段はさらに高くなります。
ほかにも違いいろいろ
キーキャップ
スイッチを押すとき、指が触れる部分のこと。色や形にも様々なバリエーションがありますが、価格に影響するのはその材質です。とくによく使われる材質としては ABS と PBT の2つのプラスチックがあります。PBT のほうが皮脂に強い、触感がいいという利点がありますが、そのぶん価格も高いです。
キーキャップの材質について細かなことはこちらの記事を参照。
接続方式
おもな接続方式は
- 有線
- Bluetooth 無線
- 2.4GHz無線
の3つ。2.4GHz 無線というのは、USB ドングルを差し込んで無線接続をするアレのことです。
有線が一番安く買えて、無線接続に対応したものは高くなる傾向にあります。持ち運びをするか、そもそも持ち運びできる重さなのかを考えて、無線接続が必要かどうかを判断します。
サイズ
よく見るキーボードは、アルファベットのキーの他にも、矢印キー、ファンクションキー、テンキーがついたモデルで、これをフルサイズといいます。ここからテンキー部分を削り取ったものをテンキーレス、さらに矢印キーやファンクションキーのスペースを削り取ったものはコンパクトサイズと呼ばれます*1。
ほとんどの場合、サイズの大きいキーボードのほうが値段は高め。しかし、コンパクトなキーボードが人気であることから、サイズが小さいものに高い値段をつけるメーカーもあります。
キーボードのサイズについてより詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
価格帯別おすすめキーボード
ここからは、おすすめのキーボードを価格帯別にご紹介。
5000円まで
とりあえずキーボードが欲しい人向け。
この価格帯で買えるキーボードはほとんどメンブレン式。市場で評価も高い Logicool の K295 を買っておけば問題ないでしょう。この価格で無線接続ができるのは魅力的。
また、パンタグラフ式のコンパクトキーボードもこの価格で買えます。薄くて軽いキーボードは持ち運びにも便利だし、普段使いでも手軽に移動させられます。ただし、コンパクトなキーボードはその分配列が歪んでいる*2ことがあるので、買う前に注意が必要です。
持ち運びのためのキーボードであれば断然オススメできるのが Logicool の K380 。
コンパクトサイズながら癖のない配列になっているので、抵抗なく使えます。Bluetoothによる無線接続にも対応しているので、外での使用にもおすすめ。
10000円まで
5000円以上を出せるのであれば、安いメカニカルキーボードが買えるようになります。
この価格帯でおすすめしたいのが G413 TKL SE 。Logicool のゲーミングブランド Logicool G から発売されています。
そもそもこの価格帯で買えるメカニカルキーボードという時点で十分にお買い得。またキーキャップには PBT が採用されている数少ない一台です。黒一色のボディに白一色のライトアップというシンプルなデザインも魅力。大手ブランドから売り出されている安心感も見逃せません。
ソフトによる設定には対応していませんが、裏を返せば「買ってすぐに挿して使える製品」であるということ。いいキーボードが欲しいけど、予算はあまり用意できない……という方に、チェックしてもらいたいキーボードです。
15000円まで
1.5万円が出せるなら、メカニカルキーボードの選択にはほとんど困らないといっていいでしょう。
1万円台前半は、ゲーミングデバイス各社が販売するいわゆる「ゲーミングキーボード」が手広く選べる価格帯です。Logicool G の G PRO を筆頭に、メカニカルスイッチとゲーミングならではの派手なライティングが搭載されています。
私が激推ししているのが、HyperX から売り出されている Alloy Origins Core 。
剛性の高いアルミボディ、スムーズなメカニカルキースイッチなど、本体のつくりは抜群。耐久性もさることながら、見た目の高級感も高いです。
さらに、ソフトを使うことでキーの配置を変更することができます。よく使うボタンを下段に設置したり、あの CapsLock を消し去って Ctrl にしたりと自由自在。
もちろんゲーミングキーボードあるあるのバックライトも健在。ド派手にレインボーで光らせるもよし、白一色でシックに光らせるのもよし。
1万円で売られている旧バージョンもありますが、おすすめはキーキャップに PBT が採用されたこちらの上位機種。Amazon から購入することでギリギリ1.5万円で買うことができます。リニアとタクタイルの好きな軸を選びましょう。ちなみに下位機種との相違点は、キーキャップが ABS か PBT か、タクタイルスイッチが選択肢にあるか、の2つなので、予算を抑えたいなら下位機種でもOK。
20000円まで
1.5万円以上になると、よりバラエティ豊かなメカニカルキーボードを買えるようになります。
この価格帯から選択肢に入ってくるのが薄型メカニカルキーボードの存在です。メカニカルのサクサクとした打鍵感や耐久性はそのままに、ノートパソコンのような薄さを兼ね備えたキーボードです。
この価格帯で買えるのは Keychron の K1 SE 。薄型の場合も、リニア、タクタイル、クリッキーから選べます。
Keychron の製品は、正規代理店の SUPER KOPEK から購入ができます。無線接続ができるキーボードの場合には、技適マークのついたもの*3が購入できるように、代理店を通して買うとよいです。
もう一つ見逃せないのは、Varmilo のキーボードです。
特徴は、「静電容量式の耐久性とメカニカルスイッチの硬質な打鍵感」を兼ね備えたスイッチ。メカニカルのカチカチ、サクサクとした打ち心地はそのままに、耐久性をアップさせたスイッチです。キーキャップも品質の高い PBT 製で、手触りをよくするために独自の加工が施されています。
また Varmilo のキーボードといえば、そのデザインも特徴。上にあげた Sea Melody をはじめ、 Sakura のような控えめな可愛さのデザインもあれば、 Koi のように華やかなデザインもあります。
代理店「ふもっふのおみせ」から購入が可能です。こちらのURLに、Varmilo キーボードの一覧をまとめています。「Varmilo 静電容量軸」がオリジナルの軸。お気に入りのデザインを探してみてください。
30000円まで
2万円以上が出せるようになると、かなり選べるキーボードに幅が出てきます。
まず、先ほど紹介した Varmilo キーボード。2万円と少しの予算があれば、既存のものだけではなく、公式サイトからオーダーメイドをすることができます。ド派手な虹色キーボードにするもよし、白黒のツートンでシックに決めるもよし。
公式サイトからカスタムキーボードの注文ができます。
またこの値段が出せると、東プレの静電容量式キーボード、 REALFORCE が買えるようになります。
先ほどの Varmilo のキーボードとは違い、ラバードームによる柔らかな打鍵感が特徴です。キーボードを叩く音も、より静かでしっとりとした音になります。
REALFORCE のキーボードは、そのデザインや色、無線に対応しているかどうかなどで多くの種類があります。気になる人は公式サイトから調べてみてください。
たとえば、写真にあげた R3UC11 はお値段25,300円。接続形式は有線のみですが、本体の重さと無線の差額を考えれば有線でも十分です。
30000円以上
富豪の領域。とはいえ、寝る時間と食事の時間以外はすべて PC に向かっている、というような、タイピングが生活の中心になっている人ならば、十分に検討の余地があります。
この価格帯で買える高級メカニカルキーボードといえば Keychron Q1 。
このキーボードの特徴は、ガスケットマウントという組み立て方式。キーを打つのに合わせてわずかに基盤が沈み込むため、メカニカルスイッチの硬質な打鍵感はそのままに、わずかな柔らかさを感じることもできます。
そのほかにも、アルミ製のずっしりと重いボディ、PBT キーキャップ、キー配置の変更、豊富なライティングなど、欲しい機能を全部載せしたキーボード。お金に余裕があればぜひ。K1 SE と同様、正規代理店の SUPER KOPEK から購入できます。
もう一つの高級キーボードは、HHKB の略称で知られる Happy Hacking Keyboard 。
スイッチは打鍵体験と耐久性を備えた静電容量式スイッチを採用しています。また、コンパクトで軽量という取り回しの良さ、Bluetooth による無線接続も備えており、持ち運びに適したキーボードです。専用ソフトでキー配置を変更することも可能。最小限の機体に最大限の機能を積んだキーボードです。
家でも外でも、高品質のキーボードをずっと同じキーボードを使い続けたい!という人におすすめ。
ここまで、価格帯別のおすすめキーボードの紹介でした。
おすすめを一台だけ選ぶとするなら、1.5万円の HyperX Alloy Origins Core 。高品質な本体に加えて、ソフトによる設定も豊富。一台置いておけば困ることはまずない、必要十分なキーボードです。
タイピングを生業としているのであれば、Varmilo や REALFORCE のキーボードを買って後悔することはないでしょう。iPad やスマホの相棒に持ち歩きたい人は K835 。機能性も携帯性もほしい欲張りさんはぜひ HHKB にチャレンジしてほしいです。
私のキーボード
参考になるかはわかりませんが、私のキーボード運用をサラリと書いておきます。
まずメインに居座るのは HHKB HYBRID Type-S 。
圧倒的な打ち心地のキーボードを持ち運んで使いたい、という人にとって、HHKBは強い味方。家でも研究室でもカフェでも、まとまった文章を書きたい、というときには必ずこれを用意するようにしています。
3qua9la-notebook.hatenablog.com
もう一つに、家で使うためのサブキーボードとして、K380 を用意しています。
家でだらだらとブラウジングをしたり、ちょっとしたメールを返したりするときなどに使います。HHKBよりも軽く薄いため、より取り回しがしやすいのがポイント。配列も悪くないし。
3qua9la-notebook.hatenablog.com
ということで、書けるだけ書きました。
冒頭にも書いた通り、キーボードは現代の執筆において欠かせない道具です。筆もペンも高級なものがあって、こだわる人はいくらでもお金をかけている時代です。キーボードに投資するのも、決して変なことではありません。毎日手で触れるものだからこそ、良いものを使ってほしいと思います。