【キーボード】HHKBを買った。

アメリカ西部のカウボーイたちは、馬が死ぬと馬はそこに残していくが、どんなに砂漠を歩こうとも、鞍は自分で担いで往く。馬は消耗品であり、鞍は自分の体に馴染んだインタフェースだからだ。いまやパソコンは消耗品であり、キーボードは大切な、生涯使えるインタフェースであることを忘れてはいけない。

___東京大学名誉教授 和田英一

 

Happy Hacking KeyBoard HYBRID Type-S (HHKB) を購入した。

 

購入当初の写真

 

これを買ってからというものの文字入力の調子がバチコリよくなった。

 

みんなも HHKB を買おう。

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはちょっと良くないよな。

 

HHKB についてはいろいろな人が思い思いにブログを書いていたり動画をあげていたりする。できる限り自分の言葉で感想を書いていきたいと思う。

 

 

見た目

 

いい。

 

今回購入したのは「墨」モデル。墨というだけあって、シャープで冴えた黒ではなく、もっと落ち着きのある黒である。これがもうはちゃめちゃに渋カッコイイ。文字を書く道具であるキーボードに「墨」という名前をつけたセンスを褒めたい。

 

おれの写真よりも美麗な公式サイトの写真をお届け。

 

電池ボックスがわずかに膨らんでいるのがダサい、とよく言われる。まともな向きでキーボードを使う時にはこの部分はちょうど死角になって見えないので、これを殊更に批判している人はきっとキーボードを逆向きで使っているんだと思う。もちろんこの出っ張りがなくなるに越したことはないんだけども。

 

打鍵感

 

めちゃめちゃいい。

 

まずはキーに触れて、押し下げる。ほんの少し触れる程度ではキーは反応しないが、ある程度の強さで叩くと、ガコっと沈む感覚がある。これが独特の「押したな」、という感覚を生む。カチッとスイッチを押しているというよりかは、雪をグッとつぶすとか、プチプチをつぶすとかの感覚に近い。

つぎに、キーが底を打つ。この感覚は非常にきれいだ。Type-S はキーと土台の接触部分に緩衝材が仕込まれている。これのおかげで底打ちは柔らかくもしっかりした感覚になっている。たとえるなら、メカニカルキーボードの底打ちはコンクリートの上を歩くときの足への反響、HHKB の底打ちは土や畳の上を歩くときの反響、といえる。

最後にキーを離す。このときには、適度な跳ね返りが感じられる。ノート PC に付属のキーボードの多くは跳ね返りがほとんどない。板に指を叩きつけているときに近い。ところが HHKB の場合にはキーがこちらを押し返してくる。いちいち「離す」という動作をせずとも、指がキーから勝手に離れていく。これのおかげで次のキーへの入力がよりスムーズに行える。

加えて、キートップの触り心地がものすごくいい。高さのあるキーボードの一般的な特徴として、キーの表面が指にあわせてくぼみを帯びている。さらに HHKB のキートップは表面が少しザラついている。これらの特徴のおかげで、キーに触るとキーが指に食いついてくれる。これも、打鍵感の向上に一役買っている。

こんな感じで、打鍵感は極めて良好。少なくともノート PC 付属のキーボードとか、持ち歩きに特化した安価な薄型キーボードに比べればとんでもなく心地いい。

 

打鍵音

 

めちゃめちゃいい。

 

まず大事なこととして、 HHKB Type-S は Silent をうたっているが、別に静かではない。めちゃめちゃ静かな場所(たとえば図書館)で打っていたら普通に打鍵音がガッツリ鳴り響く。じゃあなにが Silent なのかというと、「カチャカチャ」という高音が全くしないということである。

一般的なキーボードの音は、「カタカタ」とか「カチャカチャ」という擬音で表される。プラスチックが互いにぶつかるときの音である。この音は人によってはうるさいと思われる要因だろう。ところがこのキーボードでは「カチャカチャ」というプラスチックの音がしない。これのおかげで、「耳にやさしい音」となっている。

 

HHKB Type-S の打鍵音を「スコスコ」という言葉を使わずに表現すると、「コトコト」と「サクサク」の合いの子、といえばいいだろうか。

まず「コトコト」というのは底打ちの音。上でも述べたように、緩衝材のおかげでプラスチックのカチカチという音はかなり抑えられている。また、キーキャップの素材として使われている PBT というプラスチックは密度が大きく、重い音を鳴らす。そのため、「カチカチ」というよりかは「コトコト」という音が響く。

次に「サクサク」。これは軸がこすれ合う音である。キーを押したときには、するっと入っていくわけではなく、わずかに指に摩擦が感じられる。この時なっている音がサクサクという音である。本を読むとき紙がわずかにこすれ合う音や、かき氷にスプーンを挿したときのわずかな音に近い。

 

こんな感じで、打鍵音も非常に気持ちがよい。"Luxury" を音にするとこういう音になるんじゃないかってくらい聴いていて気持ちがいい。よく作業用BGMを流すためにイヤホンをつけるが、イヤホンを付けると HHKB の打鍵音が聴こえないというジレンマにハマっている。

 

打鍵音についてはこちらの動画を参照。静音モデルと非静音モデルでの音の違いがはっきりわかる。

 

youtu.be

配列

 

HHKB 日本語配列にしぼって解説。

 

まず Ctrl キーが A の横にお引越ししている*1。これがもう本当に最高。はっきり言ってこの点だけで見れば HHKB は神であり他のあまねくすべてのキーボードはカスである。

A 左横の Ctrl がいかに素晴らしいかは別で記事を立てて解説したので、こちらを読んでほしい。

 

3qua9la-notebook.hatenablog.com

 

日本語配列には、右下に矢印キーがしっかり入っている。矢印キーをよく使う自分にとっては、アルファベットのキーから近い位置に矢印キーが来てくれたのはありがたい。代償として右 Shift が小さくなっているが、自分は右 Shift をほとんど使わないのでそこまで大きなデメリットではなかった。

 

次に Delete について。このキーボードには Delete が単体では存在せず、 Fn+BackSpace の同時押しがその役割を受け持っている。ワンタッチで Delete が入力できないのはデメリットではある。ただ右 Fn に親指を置くと自然に右手中指が BackSpace に来るので、指の形はそれほど悪くならない。むしろ遠くまで Delete を押しにいく必要がなくなったので総合的には得になっている。

 

案外押しやすい。

 

こんな感じで、 HHKB には一般的なデカいキーボードとは異なった配列が多い。

 

さらに HHKB HYBRID Type-S にはキーマップ変更ソフトというのがある。こいつを使うと特徴的な配列をなくしたり、あるいはさらに独特な配列をねじこんだりと、配列を自由に変更でき、より快適になれる。

 

自分がやっている設定は次の通り。

上が通常時、下が Fn 押下時。青が変更した部分。

 

あまりハードな変更はしていない。どうしても気に入らなかった部分をいじったり、あったら便利なキーを Fn 同時押しで追加した程度。

 

まず、左上の Esc を かな/英数切り替えキーにしている。すでに切り替えキーは存在しているのだが、「左上のキーでかな入力と英数入力を切り替え」という Windows からの癖はもう抜けそうにないので、ここは変更。 Esc は Fn との同時押しで発動できるようにした。そんなに使わないし。

A, S, D, F に音量アップ・ダウン、ミュートなどのいわゆるメディアキーを振っている。はじめからキー印字されているのだがなぜか自分で設定しないと機能しなかった。

Fn+Space を Enter とし、さらに左手に近い部分に矢印キーを振っている。これは右手でマウスを用いてコピー&ペーストをしているとき*2、左手をいちいち Enter や矢印キーに出張させなくてよいというメリットがある。上矢印は Z に割り振るのが一番きれいなのだがどうやら使えないらしい。

 

携帯性

 

HHKB の大きな特徴としてあげられるのが携帯性である。しかしインターネットを見ていると「HHKB は持ち運びに向いている」「HHKB は持ち運びには向かない」という意見の両方がある。これは個人の感じ方によるので、重さと大きさを見て判断してもらいたいと思う。

 

本体重量は600g弱(電池込み)程度と比較的軽量。だいたいペットボトル一本くらい。ペットボトル一本は 500mL が主流ではあるのだが、最近の緑茶や麦茶は増量に増量を重ねて 600mL 程度になっている。だから大まかにカバンに緑茶とか麦茶のペットボトル一本分の重さが追加されると考えればよい。

 

これは全く関係のない健康ミネラル麦茶伊藤園

 

横幅は 30cm で、キーボードとしてはかなりコンパクト。中型程度のバッグやリュックであれば容易に持ち運べるであろう。ただし厚みがそれなりにあるので、ドラマでサラリーマンが持っていがちな薄っぺらいバッグには入らない。

個人的には、「持ち運んで使えるが、持ち運びを最優先するユーザーには向かない」、といった印象。打鍵感を犠牲にすればもっと持ち運びやすいキーボードはごまんとある。この打鍵感と打鍵音を知ってしまえば、リュックがちょっと重くなるくらいなんてことはない。

 

無線接続・駆動方式

 

ご存知の通り、 HHKB は有線・無線の両方に対応している。これは地味にありがたい。普段は無線で使って、いざ電池が切れたら有線接続に切り替えてカバー、という使い方ができる。また無線接続は最大4台まで接続先を登録しておくことが可能。メインの PC の他にも、スマホiPad にも登録できる。特に iPad と組み合わせると、ちょっとした物書きくらいなら iPad+HHKB でできてしまう。

 

無線接続時の駆動方式は電池式。これは内臓リチウムバッテリーの寿命でキーボードの寿命を決めないように、という開発者の狙いがある。そうでなくても電池式は充電式よりも「持ち運んで使える」という HHKB の特徴とよく馴染む。HHKB を持って歩いた先で電池が切れてしまっても、単三電池さえ調達できればよい。これはコンセントがある施設を探して利用するよりも、難易度とコストの両面で勝る。

し、そもそも電池の持ちがいい。僕は購入から2ヶ月ほど HHKB を使っているが、いまだに電池切れの気配は見えない。電池を変える手間からこれだけ解き放たれるのはすばらしい。ぶっちゃけ電池を変えるのも面倒であることは変わりないし。

 

まだ 100% って書いてある。そんなことはないだろ。

 

耐久性

 

耐用年数はめちゃめちゃいいらしい。もっともまだ使い始めて1年経ってないので判定できないんだけど。

このブログでは初代 HHKB が紹介されていて、その耐用年数は23年にのぼるという。現在のモデルでも根幹の機構は変わっていないので、これくらい持つ可能性もあると考えてよい。

 

trendupdate.work

耐用年数が長いと、「長く使える」以外のもうひとつのメリットがある。それは「買い替えの時に高く売れる」という点である。

僕は HHKB が大好きなので今後壊れない限りはこれを使っていく予定である。しかし今後 PFU が新型の HHKB を出してきて、超便利な新機能*3を付けてくる可能性はゼロではない。そういうときに現在持っている機種が高く売れると買い替えのコストを減らせる。「キーボードを長く使わないつもり」でも、長く使えるキーボードは役に立つ。

この手の話は「HHKB リセールバリュー」でググるといくらでも出てくる。

 

アクセサリ

 

HHKB の周辺機器はめちゃめちゃたくさんあるが、僕が使っているのはわずかに2点のみである。

 

まず一つはリストレスト。HHKB のような背の高いキーボードを使うとき、手首を机につけ、反らせるようにして打つと腱鞘炎のリスクが高まる。そうならないように手首の位置を上げ、キーボードを打ち下ろせる位置に持ってくるための道具リストレストである。

僕が使っているのは FILCO 漆塗りリストレスト。木の質感はそのままに、よりサラサラとした触りごこちになっている。また漆コーティングにより水分にも強い。僕は手汗をよくかく体質なのでこれはありがたい。お手入れも楽だし。せっかく高級キーボードを買うなら、打ち心地にダイレクトに影響するリストレストにもこだわるべき。

Sサイズが大体 HHKB と同じサイズ。漆塗りはデザインがいっぱいあるが、多分墨色にはベーシックな摺漆塗が一番よく似合う。

 

画像は公式サイトから。HHKB 墨との相性は抜群

 

もう一つ買っているのはキャリーケース。キャリーケースとはいってもいわゆるコロコロのことではなく、 HHKB を収納するための入れ物である。持ち運べることが特徴の HHKB において持ち運ぶための「ガワ」は欠かせない。

僕が使っているのはバード電子「HHKBスマートケース2」カバンの中に入れることを考えると、これくらいのケースで必要十分。開閉も楽だし出し入れも楽。前作「HHKBスマートケース」もあるが、価格差が600円程度しかないなら出し入れが楽なこっちを買ったほうがいい。

 

画像は公式サイトから。カバンに入れるならこれくらいでちょうどいい

 

HHKB について思うところ

 

といっても製品そのものについての文句はほとんどないんだけど。

 

まずはやっぱり値段が高い。

もっともベーシックな Classic に、日本語配列対応・無線対応・キーマップ変更機能を盛って5000円の値上げ幅ならこれは妥当だと感じる。でもさ、それに緩衝材つけるだけでもう5000円上がるのは重すぎる。現状ライバルがいないから強気の価格設定をしているだけのように感じる。もう2000円くらい下がらんもんかな。

 

もうひとつはカラーバリエーションの少なさ。多くは望まないから、少なくとも雪モデルは再販してほしい。現在売っているような白とグレーのレトロデザインではなく、純白のキーボードという需要は確実にあるはずである。PFU も少しは時代の流れに媚びてもいいんじゃないかとは思う。25周年の限定キーキャップは外してもらっていいから。

 

純白デザイン。最近の流行りを感じる。

 

HHKB についてもっと知りたい

 

いくつかの動画をご紹介。

 

やまかふぇ『HHKB4機種徹底レビュー』

 

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HHKB について知りたい人はまずこの動画を見ればいい。HHKB の主な特徴に加え、その背後にある HHKB の「思想」をあらかた説明してくれる。この動画内で出てくる「持ち運べる高級機」というのは、 いままで触れてきた中で HHKB の本質を抽出したもっともよいフレーズ。

 

ひねるゲームス『全人類にHHKBをおすすめしたい理由 & 購入前に知りたいデメリット』

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こちらは HHKB のメリット・デメリットについて丁寧に解説した動画。よいところはもちろん、購入前に知っておきたいデメリットも細かく解説している。

この動画での「将来を共にし得るロマンに震える」という言葉遣いがいい。耐久性が高いという特徴をここまで美しく言い換えられるものなのですね。

 

トバログ『僕の大好きなキーボードについて語らせてほしい』

 

youtu.be

トバログこと鳥羽恒彰氏は、HHKB の魅力にとりつかれ、3代にわたって HHKB を使っているという HHKB フリーク。

この動画では、 HHKB そのものだけでなく、それを通したライフスタイルを含めて語っている。「手に直接触れるものだからこそいいものを」という思想は、人がなぜ高級キーボードを求めるかの理由を端的に表している。

 

 

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www.pfu.fujitsu.com

Amazon楽天市場にも公式ショップを展開している。お得なサイトからお買い求めください。

 

 

*1:日本語配列だけでなく、英語配列でもこうなっている。

*2:多ボタンマウスを使えばコピー&ペーストをマウスで完結できる。詳しくはこちらを参照:

3qua9la-notebook.hatenablog.com

*3:現行機種の機能性からしてほかにつけられそうな新機能があるか疑問。あるとしたら 2.4GHz 無線接続だろうが、内臓バッテリーと全く同じ理由で実装されない気がする。