ミカグラです。
B4UT Advent Calender 2020 後夜祭という、一人でアドベントカレンダーを振り返るブログを書いたら唐突な自分語りが発生したので別記事を立てることにしました。草
今回はロゴ制作の裏側をちょっとと、そこから学んだ「フォントの安定択」についてお話をします。ちなみになんか謎のテンションが発動してフォントの擬人化表現が出てきてしまったので、苦手な方は注意してください。たぶん後日擬人化表現を抜いてすっきりした記事をもう一度書く予定です。
今回のロゴ制作
今回作ったロゴです。
(B4UT期末試験2020はこちらからどうぞ。音ゲーに関する問題がそろっています)
構図はよくある感じです。どっかで見たことあるなーって思いません?俺も思います まあでもただ変に凝った構図にしてもなあ、と思ったのでこれでいいや、と。逆に試験問題の表紙にバリバリ前衛的なロゴがあっても、やじゃん。
シンプルなロゴ制作にあたっては、むしろフォント選びに気を使うようにしています。今回は試験の雰囲気に合うように和文フォントは明朝体を選択。明朝体ならヒラギノ明朝か游明朝が鉄板なのですが、今回はHG明朝Bを使いました(理由は後述)。
英文フォントはGaramondを使いましたが、今考えたらTimes New Romanのほうがよかったかもしれません(これも理由は後述)。
フォント語り
ここからは自分が文書やスライド作成、ロゴデザインのなかで使うフォントに対して、意識していることを書きます。
全体的な話
大前提ですが、デザインで食いつないでいく一部の人間を除いて、一般人が奇抜なフォントを使うと必ずケガをします。過去にケガをしまくった僕が言うんだから間違いありません。
そのうえで、そうした「ケガをしないフォント」は、実はそう多くありません。そんなわけで、文書作成・スライド作成・趣味のデザイン程度であれば、数個しかない鉄板の選択肢からあったものを選べばケガをしないということになります。
明朝体とゴシック体、セリフとサンセリフ*1の使い分けですが、大きく2つの判断基準があります。
だいたいこれに則って選択すれば大丈夫かなと考えています。例えばプレゼンスライドならゴシック/サンセリフ、小説を書くなら明朝/セリフ、みたいな感じです。
明朝体
明朝体ならヒラギノ明朝か游明朝を使っておけば間違いがないです。
この2つのフォントは、いうなればザ・優等生の生徒会長です。普段の文書作成ではとりあえずこの2つからチョイスしておけば間違いありません。個人的にはヒラギノ明朝は何でもできて人気も高いオールマイティタイプ、游明朝はちょっと控えめな文学少女タイプって感じですかね。Windowsなら游明朝が、Macならヒラギノ明朝が標準搭載になっているので、一般的なPCならどちらか一つは無料で使えるはずです。
この2つはどちらも温和な印象を与えます。しかし、時には、キリっとしてお堅い、風紀委員のような雰囲気が欲しいこともありますよね。今回の「期末試験」のロゴはまさにその例です。Windowsであれば、こんなときにはHG明朝Bがおすすめです。とっつきにくさがあるので字の密度が高い文書には適しませんが、デザインの中でかっちりと形式ばった印象を与えるにはいい選択肢となるでしょう。
ちなみにHG明朝BにはHG明朝Lというきょうだいフォントのようなものがあります。もともとは同じRICOH(リコー)という会社によって作られたフォントなのですが、HG明朝LだけはMicrosoftに販売権が譲渡され、現在は違う名前でOfiice製品に入っています。そう、あのMS明朝です。間違ってもMS明朝などというクソダサフォントなど使ってはいけません。これは本質です。MS明朝に旧バージョンのOffice製品の互換性以外の利点はありません。
あとは明朝体からはずれますが、HG教科書体なんかも地味ながら読みやすいフォントで昔は好きでした。いまでは読みやすい明朝体が多くあるので、好き好んで使うこともなくなってしまいましたが。
ということで、明朝体の選択肢はヒラギノ明朝か游明朝が安定、ところによってはHG明朝、といったところです。
ゴシック体
ゴシック体もヒラギノゴシックか游ゴシックでほぼほぼ問題はないでしょう。
ゴシックはどちらかといえばフランクな文書、プレゼン資料、スライドなどに使われがちなフォントですが、ここでもヒラギノフォントや游書体は安定した立ち回りを見せてくれます。優等生の委員長キャラは例外なく私服姿もかわいいのと理屈は一緒です。
ただし、游ゴシックについては一つ問題があります。もともと游書体は、「時代小説が組めるような明朝体」というキーワードのもとにまず明朝体がつくられ、そのあとでゴシック体が明朝体に合うように作られた、という経緯を持っています。そのため、游ゴシックには明朝体で見られていた温和さがそのまま受け継がれているのです。教室の隅で一人読書をする文学少女は、プライベートな私服姿でも柔和で不思議な雰囲気をまとっているのと一緒です。そのため、プレゼンスライドのようなメリハリが欲しい部分では、どうしても力が弱くなってしまいます。
そこでおすすめなのは「メイリオ」です。メイリオは「明瞭」という言葉をもとにしており、そのはっきりした可読性全振りのデザインに特徴があります。たとえて言えば、元気でわかりやすい幼馴染ポジでしょう。そのため、人に何かを伝えるときのプレゼンスライドでは大きな力を発揮します。ただちょっと元気が空回りしてしまう不器用な面もあるので、本文ベタ打ちでは避けたほうが無難です。
というわけで、ゴシック体はヒラギノが最安定で游ゴシックも良、メリハリをつけたいならメイリオがベスト、です。
セリフ体
Times New Romanが安定です。
可読性もよく、しつこさもないTimes New Romanは、非常に広い用途で使えます。ただ主な使用用途としては新聞や学術雑誌といったお堅いところなので、フォントにもお堅いイメージがついてるという人が多いでしょう。ということで僕のイメージでは生徒会長というよりかは風紀委員感があるのですが、どうでしょう。
ほかのセリフ体フォントだとGaramondなんかは特に好きです。由緒ある名家に生まれた一人娘で、誰にでも優しく接する聖女のさまを思い起こさせるフォントで、僕は英文フォントでは断トツで好きです。「期末試験」の英字部分もこのフォントを使いました。でも今考えたらきっちりした風紀委員であるTimes New Romanをあわせたほうがよかったかもしれません。いずれにせよ、この2つのどっちかを使っとけばまず間違いはないです。
あとは、デザインのアクセントとして高級感を出したいときにお勧めのフォント・Bodoniがあります。高級感が前面に出ているこのフォントは、さながら一流の服飾を身にまとった、超大金持ちの令嬢のよう。しかしながら、それが時には鼻についてしまう場面もあるので、ふだんの文書では避けたほうが無難でしょう。
せっかくなので昔ながらの伝統的フォント、Centuryにも触れておきましょう。今でもTimes New Romanと並んでフォーマルな場面では人気が高いように思いますが、僕はあまり使っていません。Times New Romanのほうが洗練されているというのもありますが、大きな理由は斜体が絶妙にダサいことです。Times New RomanやGaramondは、文字を斜体にするとイタリック体という別のフォントに切り替わります。しかしCenturyの斜体はただ単に文字を斜めにしただけであり、これが微妙なのです。そういうわけで、Centuryは「お姉様」と呼ぶには年を取りすぎているのかなと感じます。ただ、その気品はいまも健在なので、いまでも公的文書にCenturyが使われる場面は多くあります。
ということで、セリフ体はTimes New RomanとGaramondが安定、アクセントとしてはBodoniも有効、というところでしょうか。
サンセリフ体
よほどの理由がない限りHelveticaを選びましょう。
Helveticaは今まであげたフォントとは格が違います。本文ベタ打ち、タイトル、プレゼンスライド、ロゴデザイン、すべての需要にHelveticaは対応します。あらゆることに長けてあらゆる場所に存在するゆえに、我々はもはや生活の中でHelveticaを認識できません。普段我々が暮らす中で空気中の酸素をいちいち意識しないことと全く同じです。ノリで続けてきたフォントの擬人化もHelveticaに関しては不可能といってよいでしょう。だって空気なんだもん。
サンセリフ体はイカしたフォントが多いのが特徴。真面目ではっきりしたサバサバ系のFrutiger、ちょっと遊びっ気のあるFutura、エレガントな雰囲気とやさしさを併せ持つOptimaなど、優秀なフォントが多く揃っています。安定択のHelvetica以外のおすすめはこんなところでしょうか。
Windowsは標準搭載のイカしたサンセリフ書体が少ないのが難点です。上であげたHelveticaを含む4書体は、いずれも個別にダウンロードが必要で面倒です。それでもHelveticaの代用品として使える優等生フォントとしてArialという選択肢は取れます(Helveticaよりも若干気品は落ちますが)。Gill Sansは華やかさをまといつつも品行方正なお姉様的フォントで、文書使いにもいいかも。スライドに使うならハキハキした快活少女のVerdanaも使いやすいですね。
HelveticaとArialの関係についてはこちらの記事が参考になります。
ということで、サンセリフ体は普段使いならHelvetica一択、Windowsなら代用でArialも可、用途に合わせてほかの選択肢もいいかも、です。
まとめ
ここまでフォントについて、思うところを書きました。デリバティブとして生まれたこの記事ですが、終わってみれば自分なりの備忘録に慣れない擬人化が混じった怪文書となりました。
いかなる用途でも、フォントは「安定択」を知っておけばケガをすることはありません。幸い英文ならTimes New RomanやHelvetica、和文ならヒラギノフォント・游書体というように、我々には満足な安定択が用意されています。こうした「ケガをしないフォント選び」のノウハウが、誰かの役に立てばと感じます。
読んでいただきありがとうございました。
さいごに
創英角ポップ体は安定択ではありません。