ミカグラです。
B4UT Advent Calender 2020にも、もう5回目の投稿となりました。最後の記事ということで、音楽ゲームについて、大きめの文章を寄稿させていただきます。
さて、音ゲーをたしなむものならば誰でも、「理論値」というワードに聞き覚えがあることでしょう。音楽ゲームの醍醐味の一つは、より高精度でノーツを捌き、ハイスコアを記録することです。そして、そうしたスコア更新の極致、最高到達点……すべてのノーツを最高判定で捌き、譜面への完全理解を果たした、これ以上ない点数……人はそれを、理論値と呼びます。
音ゲーマーなら誰しもが魅せられる「理論値」。しかしながら、そこには単なるスコア詰めとは異なる特殊な世界が広がっており、しかもその「特殊な状態」を語った文章は多くありません。
そこで今回は、理論値を多く経験するB4UTメンバーを呼び、理論値を取るというゲームの特殊性、そして理論値を取るにはどうしたらよいか、を語ります。
- メンバー紹介
- 1. 理論値埋めに必要な力とは?
- 2. 理論値とスコア詰めって何が違うの?
- 3. 捨てゲーをする、しないの選択
- 4. 「負け癖」の概念
- 5. 難曲の理論値
- コーヒーブレイク: 苦労した理論値
- 6. なぜ、理論値を狙うのか
- まとめ: 理論値の取り方
- さいごに
メンバー紹介
- ぶちょー: オンゲキのMASTER譜面で400近い理論値を記録するランカー。もっとも思い入れのある理論値は、14で一番回数をかけたというMEGATON BLAST[MST]。オンゲキの理論値埋めについてはこちらの記事に詳しく書かれています。
- シセン: チュウニズムのレーティングポゼッションのため、理論値埋めに励んでいる。もっとも思い入れのある理論値は、全国ランキング入りを果たしたオモイヨシノ[MST]。
- すたいら: SDVXで理論値埋めに励んでいる。思い入れの強い理論値は、インペリアル昇格を決めたSUDDEN VISITOR[MXM]。またCytusの実力もすさまじく、全世界でもたった十数人しかいないL2(Ver. B)[HARD] TP100の達成者でもある。
- Altia: オンゲキをはじめ、ポップン、jubeat、maimaiなど実に8機種で理論値経験のある多機種音ゲーマー。中でも印象に残っているのは、jubeatの難曲WONDER WALKER[EXT]*1 EXC。
- ぺんた: jubeatで理論値を多数経験する音ゲーマー。あの悪名高いJumping Boogie[ADV]をEXCしている実力者*2。最近はHoneyworksの新作音ゲーにお熱。ジャンブギ黄色についてはこちらの記事にも詳しく書かれています。
- ミカグラ: 今回の企画者。WACCAで理論値埋めをしていた経験がある。WACCAに収録されたNEXT COLOR PLANET[EXP]の最速理論値が個人的なベスト。こちらの記事に詳しく書かれています。
そもそもこの企画を思いついたのも、推しである星街すいせいの曲がWACCAに入り最速理論値を狙ったが、理論値のための本質情報がネットに転がっておらず、だったら自分で書いてしまおう、と考えたため。
1. 理論値埋めに必要な力とは?
Altia「まあ地力があるのは、前提だけど……理論値埋めに必要な力ねえ……」
ぶちょー「ぶっちゃけ、理論値に必要なのは最後まであきらめないことっすね」
すたいら「正直メンタルゲーみたいなところはある」
ぶちょー「結局のところ理論値を取る力というのは、理論値を取ったという事実の積み重ねによって得られるものじゃないかな、と」
ぺんた「理論値狙いをやってる時のコンディションはめちゃくちゃ独特で。それに慣れるためにも場数を踏むことは大事だなあと思います」
ミカグラ「場数という観点で行くと、難所が通った後にクソしょうもないところで崩れる、というのも、場数を踏むことで減りますよね」
と、とにかく理論値を取る経験を積み重ね、慣れていくというプロセスを重視していました。さしずめ、「理論値のために理論値を取る」といったところでしょうか。
Altia「新しく始めた機種では、絶対に取れるだろう超低難易度の譜面で理論値をとることで、まず経験値を積む、ということをしてるね」
ぺんた「そういう意味では、理論値を狙いたい曲があるなら、その1-2段階下の難易度で理論値を取る練習をするというのがものすごく効果があるように思いますね」
Altia「あと、自分が押したパフェが早パフェなのか遅パフェなのか、『筐体より細かく判定をつかむこと』は大事ですね」
ぺんた「理論値を狙うときは1つのミスも許されないから、最高判定のなかで速い遅いを修正しないといけない」
ぶちょー「オンゲキだと、キービームが出るタイミングを見ることで早CBと遅CBを見分けられるね」
ぶちょー「確かに同じだけどさすがにやってることが違いすぎる。いっそクリス呼ぶか」
ぺんた「そもそも同席するんですか?ぼくこの場にいられないんですけど」
ミカグラ「足18に理論値ついている人間の前で怖くて理論値とか語れないんですけど」
2. 理論値とスコア詰めって何が違うの?
例えば、オンゲキでのSSS+はMAX-2500点まで許されます。点数的には、MAX-0が求められる理論値とは、1010000点満点のうちのたった2500点しか変わりません。ほかの音ゲーでも同じことが言えるでしょう。では、理論値とスコア詰めではいったい何が違うのでしょうか?
ぶちょー「ズバリ、許容が存在するかしないか」
ぺんた「スコア詰めは、いわゆる譜面の難所が通せてしまえば、それ以外のイージーミスがあってもいいけど、理論値はそれすらゆるされない。難所以外も全部安定させないといけない」
ぶちょー「そういう意味ではスコア狙いで気にならなかった場所も全部難所になるね」
Altia「あと、1落ちを踏んだらスコアの更新がなくなるという理由で1落ちを回避してしまうためにわざとミスする」
ミカグラ「わかる、わかる!特に自分の地力より少し下の譜面だと1落ちは案外出るから、次からのやる気がなくなるんですよね」
ぺんた「これもスコア詰めにはないメンタルですね」
ミカグラ「僕は1落ちだしたらTwitterにあげてネタにしてなんとか気持ちを持たせてますね」
ぺんた「リザルトをモノトーンにするやつねwwwww」
星が今日の終わりを告げる
— ミカグラ☄️ (@hungry_and_fool) 2020年3月20日
ただ静かに……
全て包み込むように
僕らを繋いでいた……
Ah Ah Ah……………………………… pic.twitter.com/fRjPQOZA8G
ぶちょー「1落ちの数字を覚えてネタにするとかね」
ミカグラ「結局1落ちはTwitterでネタにするのが最適解なんですよね」
ぺんた「そうするとそのあとパッと理論値出ることもあるしね*5」
「許容が存在しない」という緊張の中、スコア狙いに比べてメンタルを保つことがより大事になってくるようです。とくに、自己ベストの更新が存在しない「1落ち」については、独特の対処法があるようですね。
3. 捨てゲーをする、しないの選択
序盤に難所がある曲では、1落ち以上が出た時点でプレイをやめる、いわゆる「捨てゲー」をするかどうかの選択も視野に入ります。
ミカグラ「捨てゲーすると序盤の難所を通した後に後半の譜面を忘れることがあるんですよね」
ぶちょー「僕はそうならないようにに5回に1回くらいは捨てゲーせずに全部通すようにしてますね」
Altia「僕はグレが出ても通しますね。変に癖付けないように、気を抜いてプレイする、という感じ」
ミカグラ「これって捨てゲーした後すぐにスキップできる機種*6かそうでないか*7で変わりますね」
すたいら「ボルテならPフリーは結構捨てますね。そうじゃないときはお金がもったいないから捨てない」
ぺんた「僕は捨てられない機種(jubeat)をやっているので、理論値チャレンジが失敗しても流してプレイしますね。そのほうが次のプレイが楽にできるんじゃないかなあ」
Altia「僕は『難所濃度を下げる』という意味でも捨てないですね。捨てているとずっと難所だけやってることになってしんどいので」
捨てゲーをするかしないかは人それぞれですが、お金がもったいないから、譜面を忘れないように、あるいは難所ばかりのプレイにならないようになど、様々な理由から捨てゲーをしない人が多いようです。
シセン「捨てた後にもう一度同じ曲をプレイしますか?僕は『捨てるほどに集中力切れたなら無理だな』と思って別の曲にうつるタイプなんですけど」
ぶちょー「それもまた『引き際を見極める』という話だね。僕は別の曲をやって休憩する」
ミカグラ「1クレで終わらなかったら無理として諦めます。自分の調子ではなくて、客観的に数字を決めて引き際を定めていました」
Altia「あーわかる。僕も300円でやめるって決めてやってた。数字を決めてやっておくのは有効」
捨てゲーが続いたときには、タイミングを定めて諦めるというのも重要なようです。
4. 「負け癖」の概念
ここからは、理論値を狙ううえで誰もが苦しめられるであろう、「負け癖」の概念について語ります。
ミカグラ「負け癖って、身体的な癖ではなくって、『どうせ通らないだろう』という気持ちの癖なんですよね。気持ちで負けてしまうと本当に通らない」
ぶちょー「精神衛生上大変よろしくない」
ミカグラ「しかも負け癖がつくと、その癖がついた難所を通したときの緊張が増幅されて、どうでもいいところで負ける」
Altia「本当にそれ!」
ぶちょー「負け癖に関してはね、マジで『日を改める』以外の方法がないんだよな」
ミカグラ「なんなら負け癖は時間で抜けないから、本当につけてはいけない」
Altia「癖がつく!という機運を察知した時に、うまく回避できるかという見極めが必要」
Altia「あと、信じられないようなミスをするとそれが頭に焼き付いて複数回リピートしがち。これも負け癖になりませんか?」
そう語るAltiaさんは、自身がfar east nightbird[EXT]でつけた負け癖を語ります。難所をすべて乗り越えるも、曲最後の同時押しでgreatを出し理論値を逃し、それ以降その負け癖が再発したのだそう。
ぺんた「これも理論値埋め特有の話ですよね。1ミスも許されない状況だからこそ、ミスを引きずってしまって癖がつく」
シセン「ミスをしたときに『もう一回やったらどうしよう』、と考えてしまう」
ぺんた「だから身体的な癖と同様、メンタルの負け癖もついた瞬間にすぐに離れるに限る」
メンタルにつく負け癖は、理論値狙いをする人たち全員が納得しており、すぐに離れる重要性を説いていました。
5. 難曲の理論値
理論値を狙う譜面は、低難易度に限りません。時には自分の地力より上のレベルの譜面で、理論値を狙う必要が出てきます。こんなときはどうすればよいのでしょうか。
ぶちょー「難しい曲の場合には、そもそも『かみ合えば出る』という状況になっていないので、まずはかみ合い待ち状態に持っていくことから始まる。できないところの安定度を上げるという練習をまずする」
Altia「自分の場合は、プレイの中で対策したい難所を一つに絞って、まずはそこだけ通せるように練習する。これを難所の数だけ繰り返してスタートラインに立つ」
ミカグラ「最初から理論値を通すぞ!ではなく、難所に集中して他は流す、という考えですね」
難曲の理論値は、まず「全部がうまくいけば理論値が出せる」の前段階をしっかりと固めることが大事なようです。
すたいら「僕の場合は難所を通すために、動画で研究して実機で試す、というサイクルを回してましたね」
ミカグラ「運指を変えないという意識はやってました。運指の練度をあげる、という意味で」
ぶちょー「それは確かにそうだけど、狙う段階でいろいろな運指を試すのは大事だね。自分にあった運指を見極めてから練習するのが大事」
Altia「僕は動画では運指を組まないようにしてました。jubeatは腕でノーツが見えないこともあるので、その影響もあるかも。運指はゲーセンで組んで、そのあと動画で研究する、みたいな」
ぶちょー「あー僕はけっこう動画で運指組むけどなー。予習した運指をゲーセンで試した、使えるか使えないかを2, 3回やって判断する、みたいな」
ミカグラ「2, 3回でできるのは早いですね。やっぱり理論値に慣れてるとその押し引き判断も早くなるんでしょうか」
かみ合い待ちの段階に持っていくために、思い思いの方法で譜面の研究をすることが重要、ということですね。
コーヒーブレイク: 苦労した理論値
ぺんた: nature[BSC] (jubeat)
一時期緑譜面を埋めるときに苦労した曲。230でギター主体の曲なんですけど、あまりにも音楽がずれてて。だから230で機械的に配置すると譜面がずれるんですよね。
「4分を押すだけでGoodが出ます」
一同「「「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」」」
すたいら: Night Festival[HARD] (Cytus)
「苦労したけどうれしくなかった奴はこれ。音楽はずれてないのに譜面がずれているので、目押しに頼るしかなくて苦労した」
ぶちょー: Brave Song[MST] (オンゲキ)
「最後にフィルアウトっていうのかな?だんだん遅くなるピアノパートがあるんですけど、そこしか難所がないからそこのために2分間プレイしなきゃいけなくて、虚無だった」
「実はこの話続きがあって、オンゲキの某スコアタで通しプレイの5曲目にこれをハイスピ1.0でやらされたんすよ」
ミカグラ: こんにちは、ARuFaです。[EXP] (WACCA)
「ここの拘束ホールドは親指でとるのがデフォなんですけど、これが異常に取りにくくて、しかもここ判定狂ってるんですよね」
「これも続きがあって、そのときWACCAではARuFaとのコラボがやってたんですよ。で、こいつをプレイするとプレイ終了時にARuFaが画面に出てきて、『最高最高最高~~~~』とか言われるのでマジであったまった」
Altia: こんなに近くで……[EXT] (jubeat)
「自分を形作った譜面なので。見てもらえれば全部わかります」
実際に譜面動画を見ればわかりますが、作譜が崩壊しています。
「しかもこれ、曲中に判定が変わるんですよ」
シセン: 気ままな天使たち[MST] (CHUNITHM)
「BPMのクソトロい曲なんですけど、最後の最後にある5個同時で全部だして5-0-0を記録してからありとあらゆるところができなくなった。鍵盤が光らなかったりエアーで赤出たりとか」
ミカグラ「エアーで赤出るのヤバイですね」
6. なぜ、理論値を狙うのか
ぶちょーの場合
「ぶっちゃけ、他にやることがないから」
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
「オンゲキに関して言えば、まずはレートを上げて、ABを狙うっていう目標があるけど、それがなくなったら101万をねらうしかないよね」
Altiaの場合
「理論値って、文字通り『それ以上はない』じゃないですか。だから、この曲に関しては俺は一番うまい、っていうよりどころにできる。もともと周りにうまい人がいっぱいいたから、理論値を埋めることで自己肯定感を上げていた」
「もう一つは、初めて触る機種で、理論値を出すことで地力を上げていく。基礎動作を徹底的に身に着けてステップを上げていくことで、ブレが少なくなるし、メンタルが鍛えられるから一発勝負にも強くなる」
ぺんたの場合
「単曲の話で言えば、『満点を取ると、気持ちがいい』。まずはここから始まるんじゃないかなと」
「さらに理論値埋めで言えば、コンプリート欲を刺激しますよね。難易度表を埋めていく気持ちよさ」
ぶちょー「俺のメガブラの話じゃん、あれも『これが埋まったら14全理』っていうのがあったから頑張れた」
シセンの場合
「チュウニズムは、理論値をすると虹ポゼッションがもらえるからやってる」
ミカグラ「目的としての理論値ではなく、手段としての理論値、っていうことですね」
「もう一つモチベーションとしてあるのは、アクティブにしているライバルが出してない曲を出すことで、アクティブを煽れるってところですかね」
すたいらの場合
「自分はインペリアルのために18の理論値を狙ってたんですけど、18の理論値を狙うために、16, 17で理論値の練習をしてました。理論値のために理論値を狙う、という感覚かな」
ミカグラの場合
「理論値を取るまで譜面に向き合うことで、譜面の解釈が細かくできるようになる。しかも、譜面を語るときの説得力も上がる」
Altia「譜面がカスなので、理論値を取って文句を言うとかね」
「あとは曲に対する愛情表現ですよね。僕の知り合いにいる、とある歌い手*8の曲が入ったときに理論値を狙いに行って、推しに認知されている人とか」
Altia「僕も一時期SkyDrive![EXH]を一日一回理論値取ってツイッターにあげたら、作曲者さんに認知されてますね」
ミカグラ「自分の名前が推しの曲の一番上に表示されてるのって本当に気持ちいいんですよ。理論値って音ゲーマーが推しにできる、文字通り『これ以上ない』愛情表現ですね」
まとめ: 理論値の取り方
- 理論値はメンタルの強さがいつも以上に試される。その独特な感覚に慣れるために、まずは自分の適性より低い難易度で、「理論値を取る練習」をする。
- 筐体より細かく判定を理解する。ノーツの軸をとらえることが大事。
- 捨てゲーのし過ぎはデメリットが大きいので、ある程度の頻度で流して譜面をプレイするとよい。あまりにも続く場合には、引き際をクレ数やプレイ回数などで定めてあきらめるのも大切。
- メンタルに響く「負け癖」は理論値狙いの大敵。負け癖の気配を察知したらすぐに回避し、癖をつけないようにする。
- 1落ちもまたメンタルの大敵。1落ちはTwitterやSNSでネタに昇華して、悲しみを笑いに変えてメンタルを維持する。
- 難曲の理論値は、はじめから狙おうとせず、動画や実機で譜面研究をしてかみ合い待ちの状態をつくることからはじめる。
- 自分なりのモチベーションをもって取り組む!
ということで、座談会に参加いただいたメンバーの方々のアドバイスをまとめました。この記事が、音ゲーで理論値を狙う人々の参考になればと思います。
お読みくださりありがとうございました。
さいごに
ぺんた「くれぐれも自分の地力を見誤って負け癖をつけて、こじらせ愛情表現できないマンにはならないようにね!」
こじらせ愛情表現できないマンとは、なんでしょうか。