ミカグラです。
Q. 調べたかった言葉は何でしょう? pic.twitter.com/lCGhDRNc1P
— ミカグラ☄️ (@hungry_and_fool) 2021年2月5日
こんな感じで、「イメージはわかるのに、名前がわからない!」ってもの、ありますよね。
今日はタイトル通り「一番短い板に合わせて水面の位置が決まる例の桶」についての話をします。
リービッヒの最少律
桶の話をする前に、まずはこの桶が意味するひとつの理論を説明することにしましょう。
さて、生物学における説のひとつに、リービッヒの最少律というものがあります。これは、「植物の生長は、それらに必要な因子のうちもっとも少ないもののみに影響される」という主張です。
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わかりました。今から説明しましょう。
植物の生長には、多くの要素が必要です。例えば、植物の生長に必要な三大栄養素といわれている、窒素・リン・カリウムといった元素、あるいは水や日光といったものがそれにあたります。そしてリービッヒは、そのうち最も少ないものが植物の生長を決定する、と主張したのです。
上の説に従えば、例えば肥料で栄養を十分に与え、十分な日光をあてたとしても、水をよく与えなければ、一番少ない「水」という要素に左右されて、植物が成長しない、ということになります。日光や肥料が欠けた場合も同じです。こう考えると、確かにもっともらしいですね。
こいつの名前は?
前章で紹介したリービッヒの最少律をわかりやすくイメージしたものが、上で紹介した「例の桶」です。この図においては、水量が植物の生長度合いを、桶の板が生長に必要な要素を、それぞれ表しています。そして、最少律は「水面の高さは一番短い板と同じになる」という形で表現されています。
さて、気になるこの桶の名前ですが、「ドベネックの桶」といいます。提唱したドベネックという人名にちなんだ名前です。リービッヒの最少律に比べてかなりマイナーで、知っていると少し賢くなれた気になった気がします。
こんなの覚えられないよ!となりがちなのですが、なんと「もっとも小さな要素がもっとも大きな障害になる」ということで「ドベがネックになっている」と、わかりやすく覚えることができます。「ドベ」というのは、中部より西側の方言で「最下位」という意味です。関東の人たちにとってはあまりなじみのない言葉かもしれませんね。
この有名な桶の名前の由来になったドベネックですが、残念ながらその本人がどんな人物だったのか、詳細な情報はよくわかっていないそうです。これについては、先人の記録を引用して、議論に代えさせていただきます。
最少律の応用例
人間の栄養素
植物の生長だけでなく、人間の成長についても、同じようにリービッヒの最少律を考えることができます。
人間に必要な栄養素といえば、たとえば大きく分けて、炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルあたりがあがるでしょう。また、ビタミンやミネラルには多くの種類があり、これらの間でもまた「ドベネックの桶」を作ることができます。
かいつまんでいえば、「バランスのいい食事」をめざそう、ということですね。
情報セキュリティ
企業や団体の情報セキュリティについても、同じことが議論できます。
情報というのは、どれだけ隠し通そうとしても漏れてしまうもの。それはインターネットからであったり、紙のような物質の媒体であったり、時には人の口から、ということもありえるでしょう。
そのため、情報を守るためには、さまざまなセキュリティ対策が必要です。物理的な媒体の盗難を防ぐためには、「場所」のセキュリティが重要です。シュレッダーのような不要な媒体の「破壊システム」も欠かせません。インターネットでの漏洩を防ぐためには、ウイルス対策ソフトのような対策が肝要です。さらに、人間の口から情報が漏れることのないよう、団体の構成員一人一人へのセキュリティ教育や規則も必要でしょう。
こうした対策は、どれか一つをやればよいのではなく、すべてを高い水準で行うことが必要です。これをうまく説明するのがリービッヒの最少律であり、ドベネックの桶です。もしどれかひとつでも欠けてしまうことがあれば、桶からあふれ出る水のごとく情報は漏れだしてしまうでしょう。
ということで、ドベネックの桶とその応用でした。
リービッヒの最少律は、単純でわかりやすい図式のひとつで、様々な議論に適用することができます。そんなとき、あの「一番短い板に合わせて水面の位置が決まる桶」を例に出し、「ドベネックの桶」という名前をサラリと紹介できれば、わかりやすく説明ができるし、なんだか少し賢くなれた気分になれますね。
読んでいただきありがとうございました。