【雑記】Done is better than perfect. の精神

 ミカグラです。

 今日は、ものごとを進めるうえで大切な「Done is better than perfect.」についてのお話です。

 

 

 

「雑で速いやつ」

先日、このブログを読みました。

kasasora.hatenablog.com

 

 上のやりとりでは、急ぐの仕事をスピーディーに、しかし雑に行った「わたし」に対して、「上司」が修正点や改善点を伝えている場面が書かれています。 

 おそらくこのブログは、指摘に対する気の持ちようとか、「雑で速いやつ」が「繊細な人」にたいしてすべき気遣いや感謝とかを主張しているように思います。しかし、私が気にかかったのではそこではありません。

 このやりとりを見た時、私は「ああ、これって "Done is better than perfect." の精神そのものじゃん」と思ったのです。

 

Done is better than perfect. とは

 Done is better than perfect. 「完璧よりも、まず終わらせるほうがいい。」

 この格言は、FacebookのREGISTRATION STATEMENT*1にあるものです。

 我々は、"Done is better than perfect." を「完璧を目指して終わらないより、杜撰でも完成しているほうが優れている」と解釈しがちです。しかしながら、原典に当たって調べてみると、この解釈には「足りない部分」があるということがわかります。

 

 では、原典を見てみましょう。こちらのp.69 The Hacker Wayから。

www.sec.gov

 

 ここでは、Hacker(ハッカー)という単語を「何かを作ったり、何かの限界を試している人たち」として、ハッカーのありかたを述べています。

The Hacker Way is an approach to building that involves continuous improvement and iteration. Hackers believe that something can always be better, and that nothing is ever complete. They just have to go fix it — often in the face of people who say it’s impossible or are content with the status quo.

(Hacker Wayとは、継続的な改善と反復を伴う、ものを作るやりかたのことです。ハッカーたちは、ものごとは常により良くなるはずだ、ものごとに完璧というものはないはずだ、と信じています。改善点は、常に修正していけばいい。それを不可能だと言う人や、現状で満足だという人がいても、です。)

 

Hackers try to build the best services over the long term by quickly releasing and learning from smaller iterations rather than trying to get everything right all at once. To support this, we have built a testing framework that at any given time can try out thousands of versions of Facebook. We have the words “Done is better than perfect” painted on our walls to remind ourselves to always keep shipping.

(ハッカーは、一度にすべてを完璧にしようとするのではなく、すぐにリリースをして、小さな反復を繰り返して学ぶことで、長期的に最良のサービスを構築しようとします。これをサポートするために、私たちはテストフレームワークを構築し、いつでも何千ものバージョンのFacebookを試すことができるようにしています。我々のオフィスの壁には、"Done is better than perfect"という言葉が描かれていて、常に出荷を続けるように自分たちに言い聞かせています。)

 

(カッコ内の翻訳は、DeepLを参考にミカグラが付したものです)

 ハッカーは、常に修正を繰り返して、より良いものを作る存在です。そのためには、修正をするもととなる「土台」が必要です。だから、彼らはそれをスピーディーに作ることを良しとします。

 この精神を考えれば、 "Done is better than perfect" は、「はじめから完璧を目指すより、まずつくってから修正していった方がいい」という意味に解釈できます。

 次の文にも、「まずは実践、そのあと修正」という、"Done is better than perfect"と同じような精神の格言があります。

Hacking is also an inherently hands-on and active discipline. Instead of debating for days whether a new idea is possible or what the best way to build something is, hackers would rather just prototype something and see what works. There’s a hacker mantra that you’ll hear a lot around Facebook offices: “Code wins arguments.”

(また、ハッキングは本質的に実践的でアクティブな学問です。ハッカーは、新しいアイデアが実現できるかどうか、あるいは何かを作るための最善策は何か、を何日もかけて議論する代わりに、とりあえず試作をして、それで何が機能するかを確認する、という方法を取ります。Facebookのオフィスでよく耳にするハッカーの格言があります。それは、"Code wins arguments."(コーディングは議論に勝る)というものです。)

 コーディングとは、プログラムを書くこと。あれこれ議論を重ねるよりも、まずは試作をして、そこからグレードアップをしていくのがよい。これが"Code wins arguments"の意味です。

 

「修正すれば大丈夫」の精神

 『雑で速いやつ~』のやりとりに戻ります。

 

でね、仕事する上では雑にやってダメ出しされて直すほうが効率的なの。それに、上司はいろいろ気を回さなくて済んで楽、ダメ出しで精神的なダメージを受けないから本人も楽。

 ここで「上司」が言っていることは、「まず雑に作って、そのあと直す方が効率的」。まさに "Done is better than perfect" そのものです。ダメ出しをする方は、いちいち気を回さなくていいから楽だし、「まず雑でもいいから完成させよう」という精神があれば、土台を作る方も楽ですよね。

 さらに突っ込んで言えば、ダメ出しはものごとをさらに良くするためのプロセスです。決して人格の否定ではありません。だから、ダメ出しをされることに否定的にならない、という姿勢を持つと、仕事も、自らの精神も楽になっていくと思います。

 もちろん、ダメ出しをする側にも、配慮が必要なことは言うまでもありません。それは、『雑で速いやつ~』の元記事で、上司が言っている通りです。

 

 "Done is better than perfect" の精神で、読者のみなさんの生活が楽になっていけば幸いです。

 ありがとうございました。

*1:アメリカでは、有価証券を発行する際、会社の要項や現況を政府機関に届け出なくてはなりません。そのための書類がREGISTRATION STATEMENTです。平たく言えば、政府向けの会社説明みたいなものです。