【論説】ゴママヨおよびそれに付随するさまざまな現象の研究

概要

 最近、インターネット上では「ゴママヨ」と呼ばれる言葉遊びが流行している。ゴママヨはもともと「音の連続を楽しむ」という素朴なものだったが、現在ではその定義がさまざまに拡張されている。このため、ゴママヨの総体をつかむことは混迷を極めている。

 本稿では、改めて原義のゴママヨに対して妥当と考えられる定義を与える。そして、この定義を拡張することにより、多様化するゴママヨを細分化してそれぞれに定義を与え、その総体をつかむことを目的としている。合わせて、ゴママヨに付随する現象である「ゴママヨキャンセル」「ゴママヨ回避」といった現象についても言及を行う。

 

 

 

ゴママヨの定義と例

 ゴママヨとは、2単語以上の合成語で、その接続部分で連続する同じ音が含まれている状態、のことである。転じて、上で述べた定義に従った単語そのものを指してゴママヨと呼ぶ。[1]では正式名称として「ゴママヨサラダ」をあげているが、省略形であるゴママヨと呼ぶのが一般的である。

 

 ゴママヨの面白さを構成する性質として、

  • 合成語の接続により音が連続することの偶然性
  • 音が連続することによる発音のしづらさ

があげられる。これはゴママヨの定義、また後述するオプショナルゴママヨを考えるうえでの重要な基礎である。

 

 定義について、[1]に依れば、もともとは「ある名詞の中に連続する同じ音が含まれている状態、またその名詞のこと」とされているが、現在の実情を見る限りでは「2単語以上の合成語かつ、接続部分で音が連続する」というより厳しい定義を加えるのが妥当であると考える。

例: 「サイレンススズカ」「ハースストーン」はゴママヨである。

例: 「パパイヤ」はゴママヨではない(合成語ではないため)。

例: 「パパイヤジュース」はゴママヨではない(合成の接続部分では音が連続していないため)。

 

 人名においては「苗字」「名前」をそれぞれ一単語として数える。苗字と名前の間で音が連続していればゴママヨとなる。

例: 「にじさんじ」に所属するメンバーで、「森中花咲(もりなか かざき)」、「葉山舞鈴(はやま まりん)」はゴママヨである。「魔界ノりりむ(まかいの りりむ)」、「夕陽リリ(ゆうひ りり)」はゴママヨではない。

 

 音が連続しているかどうかは、モーラによって判定するのが通例である。モーラの詳細については[2]を参照。このため、文字が連続していても発音が異なる場合にはゴママヨではなく、後述するビジュアルゴママヨとして分類される。

 

定義の拡張

 上であげたゴママヨに対して、適当な定義の拡張を行うことで新たなゴママヨを定義することができる。このようにして定義されたゴママヨをオプショナルゴママヨという。オプショナルゴママヨに対し、もとのゴママヨをバニラゴママヨということもある。

 

高次ゴママヨ

 2単語以上の合成語で、その接続部分で連続する同じ2音以上の音が含まれている状態、またはその単語のことを、高次ゴママヨという。連続する音がn音(nモーラ)の場合、n次のゴママヨといい、nをゴママヨ次数という。

例: 「無性生殖(むせいせいしょく)」、「博麗霊夢(はくれいれいむ)」、「部分分数分解(ぶぶんぶんすうぶんかい)」はいずれも2次のゴママヨである。

例: 「ORANGE RANGE(おれんじれんじ)」は3次のゴママヨである。

 しかしながら、筆者は、3次以上のゴママヨについては、発音時の絶妙なぎこちなさがなくなり、代わりに心地よいリズム感が生まれてしまうため、あまり評価されないことが多いと考える。高次ゴママヨについてはサンプル数が少なく、研究のためにはさらなる探索が必要である。

 

多項ゴママヨ

 3単語以上の合成語で、その2つ以上の接続部分で連続する同じ音が含まれている状態、またはその単語のことを、多項ゴママヨという。同じ音が連続する箇所がn個ある場合、これをn項ゴママヨといい、nをゴママヨ項数という。

例: 「モバイルルータ端末(もばいるるたたんまつ)」は2項ゴママヨである。

 多項ゴママヨでありかつその連続部分の一つ以上に2音以上の連続を含むものを、多項高次ゴママヨという。このとき、次数はそれぞれの連続のうち最も次数の高いものを取る。

例: 「太鼓公募募集終了(たいここぼぼしゅうしゅうりょう)」は、順に1次、1次、2次と3つのゴママヨを含む*1。したがって、これは3項2次のゴママヨである。

例: 「多項高次ゴママヨ(たこうこうじごままよ)」は2項2次のゴママヨである*2

 

ビジュアルゴママヨ

 発音は連続していないが、文字が連続しているものをビジュアルゴママヨという。

例: 「オレンジジュース」はビジュアルゴママヨである。しかし、発音はそれぞれ[zi]、[ju]と異なるため、バニラゴママヨではない。

 

多言語ゴママヨ

 複数言語の読みでゴママヨ(あるいはオプショナルゴママヨ)となるような状態、またはその単語を多言語ゴママヨという*3

例: カプコンのゲーム「GHOST TRICK(ごーすととりっく)」は、日本語、英語のどちらで読んでもゴママヨになるので、多言語ゴママヨである。

各国言語におけるゴママヨの妥当な判定法を決定するためには、さらなる研究が必要である。

 

架空ゴママヨ

 存在しない合成語を作ることで人工的にゴママヨを作り出すものを架空ゴママヨという。これらはゴママヨが本来持つ「偶然性からくる面白さ」に欠けるという理由から、ゴママヨと認められない例が多い。

例: 「ゴママヨヨーグルト」は2項ゴママヨであるが、実際にゴママヨヨーグルトは存在せず*4意図的に作られた単語であるため、一般的にはゴママヨとは認められない。

 

ゴママヨに関連する現象

ゴママヨキャンセル

 ゴママヨが起こっている個所をつなげて1音にすることでゴママヨを解消する操作を、ゴママヨキャンセルという。転じて、そうした操作が行われた単語を指す。

例: 「熱さまシート」は、「熱さましシート(ねつさまししーと)」にゴママヨキャンセルを施すことで得られる。

 ゴママヨキャンセルは、合成語の語感を整えるために積極的に行われる。しかし、むやみなゴママヨキャンセルは語義の欠落を招き、言葉をわかりにくくしてしまうので、注意が必要である。

 

ゴママヨ回避

 ゴママヨが起こっている合成語の語順を入れ替えることでゴママヨを解消する操作を、ゴママヨ回避という。

例: 「すいかカット」はゴママヨであるが、これにゴママヨ回避を施すことで「カットすいか」となる。

 ゴママヨの面影を残すゴママヨキャンセルに比べ、面影を残さないゴママヨ回避はゴママヨ研究家の注目を集めにくい。

 

 

まとめ

 本稿では、原義のゴママヨをはじめ、様々なオプショナルゴママヨを定義し、ゴママヨの可能性を広げた。本稿により多くの読者がゴママヨを理解し、その発見に努めてくれることを願う。

 今後の課題として、

  • 高次ゴママヨのさらなる発見、および次数と面白さの相関の研究
  • 日本語以外の言語におけるゴママヨの定義の研究

が挙げられる。

 

Appendix

 

3qua9la-notebook.hatenablog.com

 

3qua9la-notebook.hatenablog.com

 

3qua9la-notebook.hatenablog.com

 

 

参考文献

[1] ゴママヨサラダ-用語集 | ㈲しなちくシステム

https://thinaticsystem.com/glossary/gomamayo/

[2] モーラ - Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%A9

 

*1:「シュウ」は2モーラであるから、文字数にかかわらず2次のゴママヨと判断される。

*2:「ゴママヨ」を「2単語以上の合成語で、その接続部分で連続する同じ音が含まれている状態」を指す一単語と考えれば、これは1項2次のゴママヨとなる。筆者は、定義の章であげたように発音でのおもしろさがゴママヨの基礎にあると考え、「多項高次ゴママヨ」は2項2次のゴママヨである、という立場を支持する。

*3:「多言語ゴママヨ」もゴママヨである。これを2項ゴママヨとみるか1項ゴママヨとみるかについては、先の「多項高次ゴママヨ」で議論した通りである。

*4:存在したとしても、筆者は食べたくない。