【作文論】文章添削をやってみた

 くだらない記事*1*2*3を生産する傍ら、ひっそりと作文論を研究してきた私ですが、やはり理論の研究だけでなく、実践の場が欲しいもの。そこで今回の記事では、ずっとやってみたかった文章添削にチャレンジします。

 とはいえ、人様の文章を添削するのはなかなかハードルの高いもの。どこかに良い教材はないかと探していたところ……

 

avcc.hatenablog.com

 

ありました、ありましたよ。

 

 3年前、まだ作文論など全く勉強しておらず、はてブの仕様も全然理解できていなかった頃の、私自身の文章です。これならどれだけボロクソに書いても文句を言われることはない!褒めるべきところは褒めつつ、わかりにくいところ、不適切なところにはしっかりと赤を入れていきたいと思います。

 ちなみに過去の文章を見返すのけっこう苦痛

 

 

これは何

 表題通り、私の所属していたAnotherVision*4について、「そもそもAnotherVisionとはなんなのか?」という疑問を取り上げた文章です。下の添削を見る前に、まずはご一読いただければと思います。まあまあいいことが書いてあると思うので*5

 

文章全体の修正点

太字を効果的に使おう

 まずは文字の装飾について。

 ブログに限らず、ビジネス書などでは強調部分を太字にすることが多いです。重要な部分を太字にすることで、特に伝えたい主張をはっきりさせられるのは知っての通り。しかしそれだけでなく、効果的な太字の装飾は、画面に適度な変化をつけて単調さをなくせるという視覚的なメリットもあります。

 はてなブログでは簡単に文字を太字にする装飾が使えますから、ちゃんと使いましょう。

 

問いと答えを端的に示そう

 次に、文章の構成について考えていきましょう。

 まず、大きなくくりとして「謎解き制作集団がカウントダウンカレンダーを始めるのはなぜか?」という問いがあります。これに対して、大きく2つの小さな質問を通して、答えています。

 一つは、タイトルにもある通り、「AnotherVisionとは何か」という問いです。これに対して、「AnotherVisionとは、エンターテインメント集団である」という答えが示されています。そして2つ目の問いは「なぜAnotherVisionはエンターテインメントに真剣になれるのか」です。これに対する答えは「エンターテインメントは『楽しい』から」となっています。そして、この2つの問いを総合した「楽しむエンターテイナーの姿を発信するため」という目的のため、カウントダウンカレンダーの企画をスタートした、という結びとなっています。

 このうち、一つ目の問い「AnotherVisionとは何か」については、贅沢に一段落をとって強調されています。また、それに対する答えも、「個人的な意見」と前置きを入れたうえで、はっきりと示されています(ここが太字になっているとさらによかった)。ところが2つ目の「なぜAnotherVisionはエンターテインメントに真剣になれるのか」という問いは明示的に書かれていない。そのため、読者からすればぬるっと話題が変わってしまったかのような印象を受けてしまいます。

 

 この文章にはもう一つ、構成に難がある部分があります。この問題に対する修正は、もう一つの問題を示してから提示することにします。

 

論理展開を明確に

 もうひとつの問題は、論理関係の破綻です。

 「AnotherVisionとは何か」という問いに対して答えを示した段落は、

エンターテインメントというのは、なかなかに難しく、奥深い営みです。

という文で締められています。とするならば、次の段落には、エンターテインメントが「難しく、かつ奥深い」理由を説明する文章が来るのは自然です。

 ところが、次の段落は

まず、エンターテインメントはお金と時間と労力がかかります。

と続き、その次の段落は

次に、エンターテインメントには何の実利もありません。

とあります。これ、エンターテインメントの「奥深い」理由をなーんにも説明してないですよね。

 この文章では、エンターテインメントの「難しく、奥深い」理由が説明されるのかと思いきや、それを放棄していきなりエンターテインメントの「つらい」部分だけを説明しています。「まず」「次に」という接続詞も全く機能していません。ここで論理がぶった切れているわけです。

 先ほどの「問いと答えを端的に示す」というセクションでの問題点と合わせて、修正案を示します。

 まず、「~なかなかに難しく、奥深い営みです。」のあとに、「それでは、なぜAnotherVisionのメンバーは、ここまでエンターテインメントに全力を注げるのか。」という文を挿入してやります。「それでは」という接続詞により、「ここで話題をぶった切って、次の話題に移るぞ」という予告をしてやります。そのあとで、「たしかに、」と前置きを入れたうえで、エンターテインメントの欠点をあげます。そして、そのうえで「エンターテインメントは『楽しい』から」という答えを提示する、という構成を組んでやります。

 これによって、問いと答え、そして論理の展開が明確になり、読みやすい文章になります。

 

よくできている点

トピックセンテンスの意識が高い

 先ほど指摘した「まず」「次に」で始まる段落に特に顕著ですが、段落の内容を端的に示す「トピックセンテンス」が、しっかり文頭に出ています。これはすばらしい。

 文頭にトピックセンテンスが示されていれば、読み手はその内容を頭に入れて、のちに続く説明や具体例を理解することができます。これは「わかりやすい文章」に近づくテクニックです。

 

主語と述語の対応がとれている

 文一つ一つを取ると、主語と述語がしっかり対応しています。例えば、次の文を見てみましょう。

この記事から始まるカウントダウンカレンダーは、今までは出てこなかったAnotherVisionの多彩な側面を、少しでも皆さんに知っていただけるよう企画したものです。

長めの文ですが、主語と述語のみを抜き出すと、「カウントダウンカレンダーは、~企画したものです。」と、しっかり対応がとれています。手癖で書くと「カウントダウンカレンダーは、~企画しました。」などと、うまく対応の取れていない文になりがちです*6

 意識せずともこのように対応の取れた文、「格の正しい文」を書けているのは大変すばらしい。もしかして昔のほうが文章力あった?

 

その他、段落や文ごとの添削

  • 「画面の向こうの皆さん、こんばんは。」って挨拶いいな 今度俺も使わせてもらうワ
  • 「さて、~」、「謎を作る人は~」、「このように~」の3つの段落は、1つにまとめたほうがよいでしょう。こうすれば、全体で「謎解き制作集団にいるのは謎制作者だけじゃない」という主張をする、まとまりのある段落になりますね。
  • 「謎を作る人は~」の文では、「ですが、」の後ろに続く動詞が抜けていますね。うまく補ってあげましょう。
  • 「etc.」はわからない人がいるかもしれないので、「などなど。」と言い換えるとよいでしょう。平易な言葉を使いましょう。
  • 「麻雀、ポーカー、ダーツをたしなんでいる人々」のように、いくつかの事柄を並列に並べている場合は、必ず主語と述語が対応するかをチェックしましょう。今回の場合は、「麻雀をたしなみ、ポーカーをたしなみ、ダーツをたしなむ」と書き換えることができ、しっかり対応が取れていますね。
  • 「楽しいことの後には得てして疲れが来るもの」という一節ですが、「楽しいこと」は名詞句なのに、「疲れが来る」は動詞句なのが引っ掛かります。「楽しいことをした後には、得てして疲れが来るもの」とするとよいでしょう。
  • 「同様だといっていいでしょう。」では、言い回しがくどいと感じます。簡潔に、「同様でしょう。」とすればOKです。
  • 「理由はただ一つ、『楽しい』からです。」は逆に簡潔すぎます。問いの答えとなる部分なので、もっと強調してもよいでしょう。
  • 「そしてその姿勢は、そのまま謎制作にも反映されていると思います。」は力強く言い切ってしまいましょう。「~反映されています。」として自信をもって!
  • 「個性の鋭い」ってなんだ??無難に「個性が強い」とかでいいんじゃないですか?

 

 最後に、これらの添削を重ねた文章を、こちらのページにて公開します。添削前の文章と比べてみてください。

 

3qua9la-notebook.hatenablog.com

 

 

 くぅ~疲れましたw

 今後もこうした作文論に関するブログを書いていきたいです。作文技術の研究だけでなく、文章添削も意欲的にやっていきたいですね*7

 お読みいただきありがとうございました。

*1:首舐め

*2:柴犬

*3:12.9

*4:間に半角スペースを入れないのが正式な記法です。

*5:自分で言う?

*6:今でも、下書きの段階で主語と述語の対応関係がとれない文を書いてしまうことがあります。本当に難しい……。

*7:誰かやらせてくれ~~