ミカグラです。
B4UT Advent Calender 2020への寄稿も3回目、今回は音ゲーから離れて、読んでよかった本の紹介です。
コロナ渦(コロナうず)*1の中、することもなく本を読んでいたら、半年でそこそこの冊数を読んでしまいました。今日は今年読んだ本の中から、特に面白かったものを紹介します。
- Hans Rosling『FACTFULLNESS』
- 山田真哉『食い逃げされてもバイトは雇うな』『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い』
- 佐藤健志・藤井聡『対談「炎上」日本のメカニズム』
- 磯田道史『歴史の愉しみ方』
- 高島俊男『本が好き、悪口言うのはもっと好き』
- Anthony Weston 『論証のルールブック』
Hans Rosling『FACTFULLNESS』
FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
- 作者:ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド
- 発売日: 2019/01/01
- メディア: Kindle版
2019年に爆発的な人気を誇ったベストセラー。その価値は、1年たった今でも全く衰えていません。
メディアでは日々、世界の政治・経済について後ろ向きな報道がなされています。では、実際にはどうなのか?筆者は「世界の現実」を、統計や資料を用いてわかりやすく説明してくれます。新しい世界の常識として知っておきたい知識が、たくさん詰まっている本です。
それだけでなく、この本には、これから変わりゆく世界をどのように見ればよいのか、メディアから日々流される情報を我々がどのように受け取ればいいのか、という10の方法が書かれています。例えばそれは、「悪いニュースのほうが広がりやすいことを知り、ネガティブな思考を克服しよう」というものや、「一つのものごとを見てそれを過大視するのをやめ、数字を他者と比較しよう」というものです。ネガティブな思い込みを脱却し、現在をありのままに見るこれらの方法を、筆者は『ファクトフルネス』と呼び、我々に教えてくれます。
「売れているからいいもの」だとは必ずしも限らないこのご時世ですが、この本はベストセラーの名に恥じぬ、これからを生きる人類が読むべき良書です。
山田真哉『食い逃げされてもバイトは雇うな』『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い』
下巻で上巻のタイトル全否定してくるの、何?
タイトルが真っ向から対立した、上下2巻構成の本です。私もタイトルの妙に思わず惹かれてしまい、背表紙を見ただけで即刻購入。
日頃我々を取り囲む「数字」の上手な使い方を見つける本。上巻では、タイトルの「食い逃げされてもバイトは雇うな」という主張をはじめとして、日常生活のなかで使える、会計学の思考や上手な数字による表現の仕方を解説。
下巻では、上巻の理論をうまく使って数字を「悪用する」方法を説き、それらの危険性について論じます。また、「食い逃げされてもバイトは雇うな」を否定していくなどの方法で、数字に基づいた思考の限界を示していきます。
本文中にもたくさんの「数字」が登場し、著者の主張の説得力を上げています。このこと自体が、「数字を学び、うまく使うことで得をする」という筆者の主張を支えていて、なんとも憎らしい。
日頃我々の生活に密接に関連している「数字」や「お金」の考え方を変えられる本です。上下巻セットで読むのがおすすめ。
佐藤健志・藤井聡『対談「炎上」日本のメカニズム』
この本の特徴は、その構成にあります。同一の論題「炎上とは何か」について、2人の著者がそれぞれ異なった見解を変わりばんこに論じ、最終章の対談で「炎上」への対応策を見つけていくのです。一つの本の中に異なった視点が存在することで、読者も「炎上」を多角的な視点で見つめることができます。
同じ目標に対して、著者が入れ替わりつつ異なったアプローチをしていくこの本は、読むのが難しい本といえるでしょう。しかしながら、うまく読みこなすことができれば、社会現象ともいえる「炎上」について、理性的な見方を持つことができる本でもあります。
情報社会、ネット社会を生きるうえで、是非とも読みたい本です。
磯田道史『歴史の愉しみ方』
私は歴史に明るいほうではないのですが、そんな私でも楽しめた良著。
筆者は古文書解読のプロで、古今東西のさまざまな古文書から、歴史のさまざまな物語を切り取ることを得意としています。そうした「教科書には語られない歴史」の魅力がぎっちりと詰まったこの本は、読者のページをめくる手を止めません。現実の出来事でありながら、物語のようなおもしろさがあります。
また、この本の4章『震災の歴史に学ぶ』は、震災の歴史にスポットを当て、歴史研究家の立場から、これからの日本に迫りくる震災について警鐘を鳴らしています。研究のために職を辞し、家を移ったという筆者の気迫に満ちた章は、日本で生きる我々が読むべき文章です。
どうでもいいけど中公新書の緑字に白明朝の題字という表紙の装丁、かっこいいですよね。
高島俊男『本が好き、悪口言うのはもっと好き』
先ほどまでと変わって、随筆集をひとつご紹介。七五調で毒のあるタイトルに惹かれ購入。
この本は短編集のような構成になっています。その中には、中国を表す「支那」という言葉の語用について論じた『支那はわるいことばなのか』、中国文学の二大巨頭・李白と杜甫の性格を紹介する『ネアカ李白とネクラ杜甫』などの、読み応えある評論もあります。
しかしこの本の真に面白いところは、多彩なトピックについて書かれた随筆パートでしょう。様々な出来事や、とくに言葉の使い方についての批評は、その軽快な語り口のおかげで読みやすく、また鋭いメスを入れており、読んでて気持ちが良くなります。表題の通り、筆者はこれを悪口といて自嘲していますが、的を射た批判は読者に嫌悪感を与えることなく、むしろ新たな真実に気づかせてくれ読者に喜びを与える、含蓄に富んだ文章です。
サクサク読める随筆と、読み応えのある評論が一度に楽しめる文庫本なので、本を読む喜びを味わいたい人におすすめ。
Anthony Weston 『論証のルールブック』
文章を書くときにお世話になる本。
スピーチやレポート、論文などに説得力を持たせるには、正しい道筋で結論を導く「論証」が必要になります。この本では、論証の基礎基本から、文章を書く、スピーチで発表するといった実践に至るまでの様々なテクニックを、50のルールにまとめて説明しています。質・量ともに十分で、体系的にまとまった知識は、自らの文章力に必ずやよい影響を与えてくれることでしょう。
ものを書く人間にはぜひとも必要な教科書といえます。
ということで、2020年の読んでよかった本でした。
2021年も、読書を継続して、様々なおもしろい知識に触れていきたいですね。
読んでいただきありがとうございました。
*1:正しくはコロナ禍(コロナか)。